42.皇帝逝去 3/3
憲兵に簡単に状況を説明し、カサンドラはビッテンフェルトを発見した。カサンドラを見もせずに荒い口調で吐き散らした。「オーベルシュタインのやつ、事務処理を押し付けて先に逝きやがった」と。文句を言っているわりには、オーベルシュタインをずいぶん買っているようだ。
外を見ると雨が降っている。小説や漫画では不吉なことのときによく雨が降っている。そういう描写で不安を予感させるものだ。
「長生きしてそのぶん文句や悪口でも言ってやりましょう」
これではポプランの台詞ではないか。カサンドラは語彙力のない自分をこのときは恥じた。
「オーベルシュタインの悪口ならレポートになるぞ」
こうして皇帝逝去の報がもたらされた。この先はおそらく忙しい。
新たな政治体制を主君不在のままく組み立てねばならない。ヤンとユリアンが率いた彼等とラインハルトが率いた彼等が、同じ場で話し合う場を。フェザーンがこの先、政治の中心部になるであろうことは容易に想像がつく。まだしばらくは落ち着けない。いや、もともとこの人生に落ち着く場などないのかもしれない。
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