42.皇帝逝去 2/3

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両者は驚き、相手の顔を見た。また懐かしい顔をみることになり、重ねて驚いた。

「リナ、生きていたのね」
「夏目、そっちこそ」
「だーから、カサンドラよ」

懐かしい顔が不愉快そうに口を付きだしていることを無視し、カサンドラは腕時計を眺めている。

「再会より腕時計なの?」

腕時計を眺めていた視界の隅に人影が通りすぎた。反射的にブラスターを構える。 窓の外にいた人がいたのだ。言われずともわかる。あれは地球教の狂信者どもだ。
窓を開け、跨いで外へとおどりでた。カサンドラの行動に驚いたリナは同じように外に出た。雨の中、旧友が何がしたいのか理解できなかったのだ。だからこそ理解するためについていたのだ。
カサンドラは地球教の逃げていく狂信者を後ろから撃ち抜く。その光景がリナには恐怖を抱いた。

「ああ、なんてこと!」
「なんで、ついてきたの、あんた」

イゼルローン軍のユリアンと共に来たのであれば身を守るものは持っていないはずだ。殺した地球教の残党から重火器を奪いリナに投げつけたものの、リナは武器を投げたことに気がついた。彼女は射撃も人殺しも出来ないのだ。
カサンドラは雨の中でもう一人を撃ち抜いた。仕事をしていないなどと言われると困る。地球教には恨みはないが、給料のために死んでもらおう。そうカサンドラは冷静に思っていた。若干ユリアンたちより先に地球教の大主教を殺した場合どうなるのか、知りたいという欲求もあった。
しかし、雨の中、視界が悪く見えていなかったのだろう。リナに銃口が向いている事実に気がつくことが遅れた。ブラスターに気がついたリナの小さな悲鳴が耳に入り、カサンドラは左腕をとっさに伸ばした。
貫かれたことで義手がバラけていく。バランスを崩したカサンドラがそのまま地面に倒れる。カサンドラのブラスターがリナの足元に落ちた。
恐怖と生への執着が彼女にブラスターを握らせ、撃たせた。
当たったのは名射手だったからではない。相手が前に躍り出たからだ。

「リナ、よくやった」
「あ、あぁ。私、直接ひ、人を殺すなんて、はじめてで」
「戦争の最後に嫌な思いをさせたわね」

右腕で立ち上がろうとしたカサンドラにリナが手を差し出した。その手を握り立ち上がると、狂信者を見下ろす。

「あんた、なんでついてきたの」
「だって、いきなり行っちゃうから。私、地球教がいるなんて知らなかったし」
「そうね、まぁいいわ。悪いけど肩を貸してね」

リナの肩に右腕を回し、雨の中歩き出す。
しばらく歩くとユリアンたちの姿が見えた。傍に転がった死体はド・ヴィリエだろう。ヤンの仇だ。
カサンドラは右腕でリナの背中を押した。反応したのはアッテンボローだ。

「おまえ、なにしてるんだ」
「えっと、お手洗い行ってたら迷子になってしまって」

その会話に割って入ったのはカサンドラだ。OVAならワーレンが来る描写が入るが、原作では憲兵を待つ描写しかない。どうやら、カサンドラの介入により憲兵の到着が遅れているようだ。その事をカサンドラは気づいていない。

「あなた方がこれを?」
「はい、そこにいるのが地球教の大主教です。これで地球教の残党は最後のはずです」
「感謝します。ただ、武器の所有の許されていないあなた方が武器を使用したことは見逃せません。形式だけの軽い取り調べをさせてもらいます。やるのは私ではなく適当な憲兵ですがね。報告してきますから、その場から一歩も動かないように」

一方的な説明をして、カサンドラはバランスを崩さないように歩き出す。彼女の後ろ姿を見たリナが多少動揺する。なぜ、何に動揺したのか。リナはその後の人生で誰にも打ち明けなかったらしい。
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