34.再会 2/2

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ボーイッシュな格好の女性がやってきた。欠点をあげるなら背が低いことだろう。女性はサングラス越しにアッテンボローを見て近づいてきた。話しかけることなく、隣のテーブル席に座ってきた。
ポプランでもシェーンコップでもないのでナンパをする気はない。

「そういえば、アッテンボロー提督はこれで記者になるんですか。」
「いいね、帝国の内部政治やオーベルシュタインの日常生活を記事してやるぞ。」
「政治家の方が似合いそう」
「なら、常に野党だな。まぁ帝国には関係ないが。」

別の惑星に逃げて、国を作ろうか。そう言いかけたが、今の現状で言える冗談としては出来が悪すぎた。
リナは隣のテーブル席に座ってきた女性が気になっていた。サングラスをして気取っているようにも見えた。ブラック珈琲を飲んでいる女性は、リナに向けて口の前に人差し指を立てた。意味のわからないリナだったが、考える必要はなかった。
いきなり見ず知らずの男はこちらにやって来たからだ。

「貴様ら軍人が役立たずで意気地無しだから、帝国に破れ同盟はこの有り様だ。死んで命を張ったおれの息子はどうなる。役立たずのために死んだのさ。何が魔術師ヤンだ」

アッテンボローは掴みかかりたかったが、リナに止められるので敢えて行動にしなかった。

「そういうのは、マスコミのインタビューで言ったら方がいいんじゃないか?ちょっと品性にかけるが」
「大口を叩いていられるのも今のうちだぞ、おれみたいなやつらが、お前ら軍人に復讐してやる」
「おいおい事を知らないあんたらがよく言うぜ」

アッテンボローが立ち上がってそう言うと、隣のテーブル席に座っていた女性が高笑いをした。

「あはは、帝国の貴族といい同盟の市民といい、責任転嫁が得意みたいだな」

三人、そして店内の客は一気に女性をみた。アッテンボローは負けずに「自分等が決めた政治家が悪いといえないらしいな」と笑ってみせた。女性はその台詞に頷いた。

「市民代表の政治家がヤン・ウェンリーを信じなかった。それは、市民がヤンを信じなかった事と同じさ。さて、あんたそこをどきな。私はもう店を出るので」

アッテンボローの横に女性が並ぶと、男は舌打ちをしながら店を出ていった。不快な客が去って、アッテンボローは女性に手を差し出した。

「個性的ではなかったがいい演説だった」
「私が言わなくても、君が言ってたはずだ。」

適当な握手を交わし、女性は店のマスターに現金を渡した。あからさまに多額の現金だ。リナは驚きつつ、その一部を恵んでほしいと切におもった。そしてやっとリナは違和感に気づいた。

「今いる客の分も含めてだ。迷惑料だと思ってくれ」

そう言って出ていく女性の姿を見て、リナはアッテンボローに慌てて挨拶をして、店をあとにした。
「夏目!!」と叫ぶと、女性はだるそうに振り返り、サングラスを外した。歳が経っても変わらない面影で、間違うはずがない友人の顔。
理菜と夏目の再会となった。
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