32.ラングの愛想と私 2/3

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カサンドラは手をつかまれた瞬間、ビッテンフェルトに言われたことを思い出した。
「お前は強いことは知っているが、女であることを知らん。男相手は気をつけろよ?」
この意味をやっと理解したように感じた。
カサンドラは本能的に腰の下げていたブラスターを抜いていた。気がついたころには上官が無様な格好で口を開いたまま死んでいた。自分がしたことに思いのほか動揺していなかった。この処理はどうしようか、と簡単に悩んでみる。部屋をノックされ、カサンドラはやっと動揺した。この状態で人に入られたら、罪に問われて死刑であると。扉のロックをしようとしたとき、扉が開いてしまった。

「カサンドラ、妙に静かだけど、上官にどやされてたんじゃ・・・って何してるの!?」

エラは驚いてカサンドラの手をつかんだ。軍服の一部に血がついて、手にブラスターがにぎられたままだった。動揺に動揺を重ねたカサンドラは、無意識に涙を流していたのだが、本人は気づいていない。

「どうしよう。ビッテンフェルト提督が、私のせいで・・・・・・」

プライドの高いカサンドラが、動揺し助けを求める事態にエラは若干の優越感に浸った。頼らない彼女に頼られただけで、優越感に浸るぐらいで罰は当たるまい。カサンドラの頭を撫でて慰めてやりたかったが、エラはためらいなく彼女の軍服を脱がせた。

「その格好見られたら言い訳できないでしょ!?あとは任せなさい」
「どうするの?」
「カサンドラって頭いいけど馬鹿ね。軍艦の中で事故死なんてあり得るでしょ?」

そこまで言われてカサンドラは理解した。エラは死体を、カサンドラは退却命令を処理するために部屋を出た。
死体がブラスターの使用がわからないほど破損していれば、事故死で処理されるだろう。艦隊には危険区域が存在する。そこでの事故死に装うしかなかった。
この事実を知るのはエラとカサンドラと死体のみである。カサンドラが殺害したという噂すら流れなかった。協力者がいて、命令最中に死体処理をしていたなど考えつかなかったのだ。カサンドラに有力な友人がいると知らない段階だったことが大きい。
ラングの顔を思い出したカサンドラは、ハッタリであることに気づいた。妄想だが、この場合は当たりである。ヘマをしないように、死んだエラに迷惑をかけないように、カサンドラは知らないフリを決め込んだ。
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