27.前置きは抜きに 3/3

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ダブルベッドを買わないといけない、と思いながら寝ている恋人の頭を撫でた。
理論寄りな思考の奴は、どうやら感情表現が下手らしい。ロイエンタールといいオーベルシュタインといい、冷笑癖揃いではないか。ビッテンフェルトは口には出さないが毒を呟いた。
カサンドラが不器用なのは今に始まったことではない。不気味なぐらいに話さない、反応が薄い。第一印象は不気味な奴、だった。驚きと動揺以外では本当に反応が薄かった。仮面を意地でも外してやろうとして、オムライスを作ったことがある。ケチャップでハートを描いてあげて。そして、はじめて冷笑された。
軍に入れたのは近場に置いた方が、言語習得も家庭も楽だと思ったからだ。結果だけ見れば、彼女の成長を妨げただけだ。しかも、ビッテンフェルトが恋心に気づく結果にもなるとは思わなかった。
彼女には力量がある。これを知っていて副官にしたいと思ったが、あれがただの独占欲だったとは誰があの時点で気づいただろう。はじめから子供として見ていなかった、ことになる。
ロイエンタールがカサンドラを嫌う理由は明白にはないが、あの結婚や女に偏見を抱く男に、ビッテンフェルトはこう訊かれた。
「あの“日本人”を卿はどうしたい」
答えは決まっていた。
第四の惑星から来ようが、過去から来ようが、彼女にはそういう意味で帰る場所がない。

「おれの横に帰ればいい・・・まったく、色男の台詞だな。気持ちが悪い」

何があっても、彼女はビッテンフェルトの元に帰ることになる。やり方はどうであれ。
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