27.前置きは抜きに 2/3

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今までの流れからカサンドラは必死に逆算した。そして、「メリハリ=結婚」という式に行き着く。
互いのことを知っているからこそ、ビッテンフェルトは先に釘を刺しにかかった。

「理屈をこねるなよ、理屈を!!おれが聞きたいのはお前の意思だからな」
「え?」

理屈抜きでと言ったのが、かえって混乱を招いたらしい。目をあちらこちらに向けて、助けを求めている。猛将には、体調不良で思考が鈍っていることをお構い無しのようだ。

「良いか嫌かの二択だろう。何を悩むんだ」
「私はてっきり、愛想を尽かされたと思ってまして」
「なぜだ」
「男性は守りがいのある女性がいいと聞いたことがあります。それに、今回の件で相談しなかったから。ふ、普通は愛想を尽かしますよ!?」

頼りないと思われたとか可愛げがないとか、この程度の理由で愛想を尽かす男性は多い。他には付き合ってみたら何か違ったとか。
ビッテンフェルトとしては、ふざけてるのかと言いたくなった。ふざけていないことは分かるが。

「答えが聞きたいのか」

かなり低く自制が効いている声に、怯んだカサンドラは慌てて頭の片隅にあった回答を掴んだ。

「愛してます、提督!!」
「お前にしては上出来というか、飛び級だな」

頑張ったのだからむしろ褒めろ、と顔に書いてあるカサンドラを無視し、ビッテンフェルトは頭を撫でた。さすがにそこまで鈍感ではない。次に来るものぐらい予測できる。いや、期待していたのが正解だ。
こんなときは目を瞑るもの、とは誰が決めたのだろうと思っていた。羞恥心なのだろうな、と答えらしいものが出た。
しかし、二人の間に毛が割り込んだ。二人からも空気からも忘れ去られていた愛犬が、自分も構ってくださいと言わんばかりにやって来た。尻尾を元気に振っている。帰宅が久しぶりであったこともある。構わないわけにはいかない。グレた犬になられては困る。

「空気を読め、空気を!!」
「あはは、アルテマも寂しかったのよね」

驚いた。カサンドラの声のトーンが上がっていた上に、見せることを拒んだ笑みを浮かべていた。色々と彼女の中にあった不安や恐怖を取り除けた結果である。簡単に言えば、この世界に来たストレスが精神の成長を妨げていた。それを取り払った彼の功績は大きいと言えるだろう。
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