第一話 目指すはダーマ神殿
重い。水に沈められたような感覚がした。
ここから抜け出さなくてはならない。ユーリルはそう感じた。
光のない中、必死に光の痕を探し続ける。
「あ・・・・・・に・・・・・・だろ・・・・・・」
途切れ途切れに聞こえる声に耳を傾けないようにしながら、光を見つけようとする。
目を覚まさなきゃ。戻れなくなる。
痛みによって覚醒したユーリルは、宿屋の天井を眺めていた。
昨日は確か、サントハイムの宿屋に泊まったのだ。
起き上がると、目の前でクリフトとピサロが何やら揉めているのを発見する。
どうやらユーリルは、ピサロに殴られて起きたらしい。
それに対しクリフトが怒っているのだ。ザメハで起こしてやれ、と。
額の痛い場所を擦りながら、鏡を覗きこむとコブが出来ていた。
「ユーリルさん、魘されていたんですが、覚えてます?
あぁ!!コブが・・・・・・ホイミ!!」
「ザメハより早い起こし方だろ。」
「ピサロ、てめーロザリーにも物理ザメハで起こすのか?」
文句を言いながら立ち上がり、ピサロとユーリルの間で火花が散るのをクリフトは見た。
やはり仲が悪い。仕方がないのかも知れないが、少しは仲良くしてもらいたいものだ。
クリフトは仕方がなく、朝から特訓しているアリーナやテレサのもとに連れ出すことにした。
残されたピサロは黙って背中を見つめる。
奪われた者同士ではあるが、ピサロが彼のものを奪ったのだ。
仲良くなれるわけがない。ソフィアがロザリーを生き返らせ、ピサロを救ってくれた。
だからピサロも人間の中にも自らを犠牲にしてまで、他者を助けるいいやつがいるぐらいわかっている。
それでも彼との立場では明らかに仲良くなれるわけがない。
もしこれが逆なら、ピサロはユーリルを許せるだろうか。
それが答えになる。
「ちげーよ、ピサロ」
「・・・・・・」
「わかりあえないと割りきってるから分からないんだろ?」
ベビーサタンがいつの間にかピサロの肩にいた。
やけに右肩だけ重いわけだ。
「貴様は、はじめから人間を理解しようとしていたのか?」
「そんなわけあるか。
理解したくなかったさ。でも世話をしてくるテレサを見て、こいつはなんで魔物のオレを構うのか、気になったのさ。」
分かりあいたいなら、疑問を持て。疑え。
疑うということは相手に興味があることと同じだ。
無条件に信じるのは、無関心なのと同じだ。
ピサロはそう言われている気がした。
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