第六話 更なる冒険へ
初めて訪れる天空城は、少し歩くことに躊躇いを感じるような場所だった。
ピサロは相変わらず天空城内には入らないらしいが、ベビーサタンがお供するため寂しくはないだろう。
天空に浮かぶ不思議な城に感動しながらテレサは、自分は今すごいことに関わっていると初めて実感した。
マスタードラゴンがいる場までユーリルを先頭に歩いていく。
その背中がクリフトには悲しげに見えた。
「ユーリルか、よく来たな」
「・・・・・・来たくて来たんじゃないさ」
「うわ、マジで天空城にドラゴンが」
テレサが躊躇いなく驚くなか、ユーリルは不愉快そうにマスタードラゴンに頭を下げた。
なぜ彼が竜の神を嫌うのか、検討がつかないが本題を聞くことにしよう。
天空城にいながら、世界を見ているこの神なら異変ぐらい気づいているだろう。
「世界の異変か。
あれは生まれる前触れだ」
「生まれる?何がですか?」
「生まれてはならないものだ。
それが何であるかは私にはわからん。
神は万能ではないからな。」
生まれてはならないものが誕生する前触れ。
恐怖から魔物が暴れるのか、それを祝福するために魔物が暴れるのか。
これはかなり大きな違いだが、確かに神は万能ではない。
おそらく何がどこで生まれるのか、自ら調べねばならんのだろう。
気が乗らないユーリルと楽しそうなアリーナという真逆な二人を見ながらクリフトは、やはり不安が離せなかった。
テレサは気づいているのだろうか。
「今はまず強くならねばなるまい」
「いや、Lv.99なんですがね」
メタ発言をユーリルが飛ばしたが、マスタードラゴンはスルーした。
器が体並みにデカイのだろう。
「世界にはダーマ神殿が存在する。
そこで新たなる力を解放するのだ」
ダーマ神殿といえば転職するための大神官がいる場所だ。
クリフトが喜んで行くのだろうな。神官としては夢のような場所か。
それが存在すると知ったクリフトは上機嫌だった。
しかし、ユーリルだけはやはり暗い顔をしている。
事情の知らない我々は退散させていただこう。
クリフト、アリーナ、テレサは先に天空城から出ることにした。
残されたユーリルは殺気に近い目をマスタードラゴンに向けた。
殺伐とした気に気づけたのはいただろうか。
「マスタードラゴン、あなたが世界を見ていたならシンシアは救えたんだ」
ただそれだけを吐いた。
マスタードラゴンにそう言ってやらないと気がすまなかった。
冷たい気を隠さずにマスタードラゴンに背を向けたユーリル。
これから先の旅の中、彼はどんな答えを見つけ出すのだろうか。
〜第一章 武術大会 END〜
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