第六話 更なる冒険へ
腰の痛いブライは応接間に慌てて飛び込んだ。
理由は簡単。
武術大会を荒らしたドラゴンガイアのことを聞かされたからだ。
アリーナ姫とその他の者たちで倒したと聞き、アリーナ姫の成長に感動しながら、腰をかかえてやって来た。
ユーリルをはじめとする旅の仲間たちの他に、新たな顔ぶれもいたが、気にしている場合ではない。
本来いるはずのないドラゴンガイアの襲来があまりにも不吉だったからだ。
「お父様!!ドラゴンガイアなんて初めて見たけど、私の敵じゃないわ」
「姫様、そういう問題ではありません。
ドラゴンガイアは文献にのみ記されるような魔物です。
それがサントハイムの武術大会に来ること自体が異様なんです」
「うむ、最近では本来いるべきではない場所に魔物が現れているようだ。
何かの前触れかもしれん」
王様が唸り声で悩む。
魔物の出現の噂はユーリルのもとにまで届いていた。
実際にソフィアが遭遇したのだ。自宅近くにフラワーゾンビを。
わかめ王子がピンクになった魔物だが、知らないソフィアを驚かせるには充分過ぎた。
鋭いギガデインの一撃で退治したらしいが、これがもしソフィア一人で退治しきれなかったら大変な事態だった。
テレサに出会う前に出くわした魔物も、その前触れというやつだろう。
「もう一回旅に行かせて、お父様」
やはりそう来たか、と思わせる頼みに王様は返答をしなかった。
簡単にできる話ではない。これから予想もしない魔物に出くわすことはあり得るのだから。
しかし、引かないのがアリーナの美点と言える。
咳払いをして、テレサは割り込んだ。
「そうは言うがアリーナ姫。
ドラゴンガイアにあれだけ手を焼いたんだ。
これから太刀打ちできないような魔物が出てくるだろう」
「そうですよ、姫様。
何かあったら、このクリフト・・・・・・」
「俺は行く」
反対する人の中でユーリルはポツリと呟いた。
その呟きは勇者らしい呟きではなく、悲しみに満ちた呟きだ。
どこのものか分からない不安に襲われながらクリフトは、アリーナを横目で見た。
目を輝かせたアリーナにちょっと呆れてしまった。
「娘をとめることも、君たちをとめることも出来んのだろう。
だが、どこを調べるつもりかね」
許可がおりたことに喜ぶアリーナ。
それ以外は王様の指摘に頭を悩ませた。
確かに行き先なんて検討もつかない。
今まで検討のない旅をしてきた訳だが、原因も小さな目的もないまま闇雲に動くのはよくない。
彼らを眺めながらユーリルは自信ありげに言う。
「自分らが旅した場所を思い返せよ。
まずいくべき場所があるだろ。
テレサは初めていく場所だな」
クリフトは忘れていた自分がちょっと恥ずかしくなった。
「天空城ですか!!」
世界を見るあの竜なら何か知っているかもしれない。
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