第五話 意外な第七戦目
ユーリルはただ静かに呟いた。
「ふざけるな。なんでピサロなんかの力を・・・・・・」
これで神官は思い出した。
ソフィアとユーリルの幼馴染みはピサロに殺されているのだ。
妹であるソフィアは昔のことと言っていたが、彼もそうであるとは限らない。
あからさまな敵意に恐怖を抱くクリフト。自分は彼の地雷を踏んだと。
しかし、私的事情を挟んでいることをユーリルは理解していた。
だからこそ不愉快の狭間に立たされていた。
「・・・・・・なあ、ピサロ。あんた行けよ」
避難経路を確かめていたベビーサタンとピサロ。
魔物として耳の良いベビーサタンはユーリルの声が聞こえていた。
当然ではあるが、ピサロにもはっきり聞こえていた。
戸惑う人を誘導するなど、確かにピサロの性には合わないが、だからと言って行く気にはなれない。
「あのまんまじゃあぶねぇ。
テレサにゃ感謝してんだよ、おれ」
「私がやってやる義理はない」
「・・・・・・まあそうだけどよ。
人間にも良いやつがいるんだ。
わかりあう為には助けあうのが先じゃねえ?」
「自分で私には頼りたくないらしいからいい」
「だ〜!!人から寄ってくるって思うなよ!!」
なぜベビーサタンから説教を食らっているのか、ピサロは訳がわからなくなるが理解はできた。
近寄らずして互いを理解できる訳がない。
理解すれば何か変わるとベビーサタンは言いたいらしい。
その手始めに助けにいけと。
ロザリーを助けてもらった礼はする。ピサロは仕方がなく彼らの元に向かった。
世に言うツンデレは彼のことか。
「ハアァァァァ!!」
「凍てつく波動か?
なんか息、臭そうな気合いの入れ方だな」
「空中で凍てつく波動する必要あるのかしら。
まあこれで攻撃できるけど。」
「・・・・・・ちっ」
華麗に着地したピサロを嫌そうに眺めたユーリルは、剣をドラゴンガイアに向けた。
怒りの発散はドラゴンガイアの身で行う気らしい。
八つ当たりの対象にされた悲しきドラゴンガイアは、鋭い手を降り下ろした。
素早さは誰よりも早いアリーナは悠々と避けて会心の一撃!!
口笛で感心の意を示したテレサ。
しかし、またしても例の「竜眼」とやらを唱えられた。
そこにはりきったクリフトが・・・・・・
「ザラキ!!」
と唱えたので、アリーナは悲鳴をあげた。
現在絶賛呪文完全ガードだったのだ。
勝手に自滅したクリフトを見てテレサは意外にこの神官バカか、と言ったがとりあえず知らないふりをした。
マホカンタやゾンビ、ボスにザラキをするクリフトは定番である。
しかも仲間として見てきたアリーナにはいつも通り過ぎて困る。今かよ、と。
「またクリフトが死んでる!!」
「噂通りのザラキ厨めが」
「そういえば私にザラキーマの使い方を聞いてきたな」
「いつもなのか、これ」
呆れながらクリフトにザオラルやザオリクをかけたのは、この戦闘のあとになる。
起きたクリフトが姫様を守れなかったと騒ぐことになるが、それ以前の問題で指示があるまでザラキを使うな。
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