第2話 終わる世界で 2/4
4時に目を覚ましたフリオニールは、セシルとカインを起こさないようにテントを出た。二人は気を使って狸寝入りを決め込んだ。
綺麗でありながら、不気味な空を見上げ、大きな欠伸をした。まだ少し眠いが、もう一眠り出来そうにない。環境変化によるストレスというなら、今までそんなストレスを溜め込む機会いくらでもあった。恐らく要因は、別にあるのだろう。

「フリオニール、早すぎないか。まだ4時なんだ。
朝食出来てないよ」

起きたばかりか、寝癖まみれのレイナが、欠伸しながら家から出てきた。起こす気などなかった罪悪感と、手入れもしていない状態の彼女との遭遇という恥ずかしさが混合する。
咄嗟に出た言葉は謝罪だった。

「いやいいさ。魔物かと思っただけだから。
そんなに謝るならちょっと付き合え」
「えええぇ!!な、何に」
「・・・・・・お前、面白いな」

完全に呆れられたフリオニールは、とりあえず武器とポーションを持ってきた。レイナも適当に髪を束ねただけで、両手剣を背中に背負う。二人して欠伸をしながら、彼女を先頭に近くの森に入っていく。

「近くに川があるんだ。久々にそこで魚を取ろう。
二時間あれば戻って来れるだろう。」
「近くにあるなら頻繁に行けるんじゃないか」
「森は凶暴化した魔物の巣なんだ。あんたらが森から抜けられたことが凄いんだ。
それに、魔法全般使えなくて。なんだ、笑うな!!」

フリオニールは自分も魔法が苦手という点を思い出して、親近感が沸いた。と、同時に危機感も抱いた。レイナが連れてきてくれた理由は、魔法が使えない自分の代わり。その代わりが魔法が苦手では怪しいのではないか。持ってきたポーションの数を見ながら、自分のケアルも計算した。ケアルLv.3精神と知性は・・・・・・言わないでおきたい。

「えっと、俺も魔法が苦手なんだ。バックアップしきれる自信がないから戻らないか。
セシルとカインもいた方がいい」
「それ、先に言わないか。」

彼は辺りを見渡した。囲まれている。敵の数は複数。数で明らかに不利すぎる。これが全部ボムなら面倒なことになりかねない。一気に自爆したら、レイズをかけて貰えるのだろうか。

「フリオニール、やれる黒魔法は?」
「ファイア、ブリザド、サンダー、フレアー、一番あてにならないアルテマ。」
「アルテマがあてにならない!?
どういう基準だ。
まあいい。改めて言うが、私、魔法は一切できないからな」

言い終えて、群れに飛び込んでいくレイナ。後ろでファイアを全体に唱えるフリオニール。
群れの先にいたゴーレムを見て、攻撃をせずにレイナは半身ほど下がる。適度な距離を保ち、このゴーレムは後回しにするようだ。周りにいたのは、面倒なボム系とプリン系。両手剣を固く握り、ボム系を確実に一体ずつ倒すことにした。フリオニールもゴーレムを後回しにし、プリン系を一体ずつ倒す。元々知性が高いわけではないフリオニールは、プリン系ラスト一体を倒して魔力が切れた。ゴーレムの攻撃にも気を使っていた分、疲労もかなりのもの。レイナの方もボム系全て倒して、体力不足に陥っていた。

「疲れたな。本当魚食べたい」
「生き残らないと魚も何もないじゃないか。
ゴーレム一体なら二人がかりでいけるか」
「というよりやるしかない。最低撒くぐらいはやらないと。
ちょっといい案があるんだが、乗らない?」

ゴーレムの強い一撃を避けて、二手に分かれたフリオニールとレイナ。足の遅さと体力から狙われたレイナは、あえて左右に移動することで追い付かせないつもりらしい。そこにフリオニールの矢が飛んできて、ゴーレムが気をとられる。前を向いた時には、すでに彼女はゴーレムの視界にはいなかった。ゴーレムは彼女を探して歩き始める。見つからないことを祈りながら、木の裏に隠れた。しかし、ゴーレムにはレイナの長い髪見えていた。木ごと殴るゴーレムと頭めがけて矢を引くフリオニール。そして木の上からゴーレムめがけて両手剣を降り下ろすレイナ。
長い髪は囮。レイナが自分で髪を切り、木の枝にくくりつけ、あたかも自分が隠れているように見せ掛けていた。
肩の位置より短いショートカットになるのは嫌ではあったが、命の方が大事だ。

「ふぅ、フリオ無事?」
「髪、すまない。俺がもっとちゃんとしていれば」
「意味ないことを振り返られても困るだけなんだけど」
「すまない。」
「・・・・・・はぁ。まあいいや。
戻ろう。朝食たべたいし、ガイアの町に情報集めがてら、買い物しないと。」

呆れたような顔を向けられたフリオニールは、自分の未熟さに後悔した。ちょっとした魔法すらまともに使えず、女性の大事な髪を犠牲にしてしまったこと。守りたいと思えば思うほど、なんだか空回りしている気がする。元の世界でもそうだが、魔物に騙され、回復魔法が下手で、マリアとガイに迷惑をかけすぎたと思う。
一方でテレサは、後ろで誤解をしているフリオニールに申し訳ないと思いつつ、訂正はしなかった。そこまでの仲ではない。言う必要もないと思うことにした。
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