第14話 この世界の竜騎士 1/4
敵地から離れて宿に着いた彼らは、クリスタルなんかよりバッツへの説教が始まった。
内心でスコールが「サボテンダーじゃないだけマシじゃないか」と呟いたらしい。彼の場合は、口に出した方がいい。
怒られたバッツはボコボコにされてベッドに投げ飛ばされていた。
やっと助かったティーダたちと情報交換に移ることになった。スフィアにあった通り、彼らは勝手に反逆者の濡れ衣を着せられていたようだ。実は一番気になるのがクラウドの存在である。なぜノコノコ見知らぬ人について行ったのか。

「クラウド、知らない人にはついていかないと教わらなかったのか?」

父親らしいウォーリアである。

「行くあてがなかったから。それにスーツが懐かしさを呼んだ」
「えっと、まさかそれだけ?」
「それより、そのモーグリのぬいぐるみだが、敵からもらったものだろう。」

オニオンナイトのツッコミもウォーリアに軽くスルーされ、呆気なくモーグリのぬいぐるみ話に変わった。
まずは、そのぬいぐるみの出所が、クラウドのゲーセン景品であることが発覚。スコールとジタン以外は普通に驚いたようだ。この二人はクラウドがゲーマーであると知っていたらしい。

「では、スノボとやらで良いスコアを出すことがクリスタルを出す鍵であったのか」
「そんなことにしたら、もっと前に出されるんじゃないか?」
「いや、ゲーセンの店長がクリスタルが入っているぬいぐるみを渡さないといけない。」
「いやいや、店長さんがそのぬいぐるみを捨てちゃったらどうすんだよ」

ウォーリア、オニオンナイト、フリオニール、ジタンが議論をする。
クリスタルの出所よりクリスタルをどうするのか、をまずは決めるべきだ。
バッツはぬいぐるみからクリスタルを取り出して、目をキラキラさせながら眺める。ラグナもクリスタルを間近で見て、テンションが上がっている様子。いつの間にか二人でクリスタルの取り合いになっている。比較的に真面目メンバーが気づいた頃には手遅れだった。クリスタルを落として割ったのである。
全員で青ざめながら、クリスタルの残骸を見つめた。

「バッツとラグナ。ここに座りなさい。当然、正座だ」

ウォーリアのながーい説教が始まり、二人は泣きながら聞くことになった。
他はさっさと寝てしまおうとこの部屋を後にした。念のため部屋を3部屋借りて正解だったようだ。レイナは一番眠いようで、速攻で眠りについた。

その頃、『審判者』のアジトではトンベリを追い出す作業をしていた。特にエントランスはトンベリキングのせいで壊滅状態。使い物にならなくなっていた。
レンはその光景をドラミルのクリスタルルームで魔法越しに眺めている。囚われていた地下一階のそのまた下にあったクリスタルルームは、水で覆い尽くされていた。
クリスタルルームにやって来た招かれざる客に、彼は形だけ歓迎をする。
スーツに少し血がついている。女性に殴られて伸びていた憐れな野郎には興味がない。

「ギランか」
「貴様がクリスタルルームの場所を知っていたとはな。
なぜあんな奴らに渡したんだ」
「お前らに渡すよりマシだろ。」

まさか、預けた奴らがクリスタルを落として割ったとは思わないだろう。
割れる結果になっても、クリスタルを彼らの手に渡しておきたかった。彼らなら真実に辿り着いて、自分では果たせないことをしてくれるのではないか。これが責任を彼らに押し付けている行為であると分かっている。しかし、この世界では彼らしか頼れないのだ。

「死んでもらうぞ、竜騎士」
「何をしようと転がった石は止まらないさ」

この世界での竜騎士は賢者に仕える騎士に過ぎない。賢者がいない世界に騎士など必要がいらない。すでに歯車から除外された騎士を殺しても何も始まらない。
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