第13話 アビリティ【どうぶつ】 2/2
エントランスの騒ぎは下の階にいた彼らにも聞こえていた。
レイナは驚きつつも、クラウドに話しかけた。フリオニールの予想通り、彼女はクラウドを疑ったのだ。クラウドはフリオニールに言われた通りに、証として彼のバンダナを見せた。しかし、反応は予想外なもの。
「貴様、フリオニールからむしりとったな!?」である。
剣をクラウドに向けようとするレイナをセシルが片手の力で止めにかかり、仲間である説明を早口でこなした。

「とりあえず、バッツがエントランスに魔物を呼び出して、フリオニールが退路を確保しているはずなんだが」
「うわああぁぁ〜!!」
「退路は無理そうだね」

フリオニールの声がした方を皆で眺める。嫌な予感はしてはいたが、退路の確保で詰まるとは思わなかった。全員で戦う準備をして待ち構えた。
やって来たのは両手に盾の泣き目のフリオニール。
これを見て、バッツが危ない魔物を呼び出した事実をすぐに察した。しかも、レイナにはチラリとランタンが見えたので、顔が青ざめた。

「な、なんだあのトカゲみたいな包丁持った、あの・・・・・・見たことがあるやつ・・・・・・」
「トカゲではないんだが。とりあえず、トンベリか」

トンベリを知らないセシルは首を傾げて見る。
緑のボディーに茶色の服。両手にはランタンと包丁を持ち、ただならぬ殺気を出している。セシルは見たことはあったが、実態は知らなかったので見た目とのギャップに驚いた。
敵にはしてはいけないと察し、これを倒して退路を切り開くのかと思うと恐怖しかない。
ウォーリアだけが冷静に、動揺しているフリオニールから盾を取り上げて戦う姿勢を見せる。あくまで盾を使うようだ。
これを見たクラウドが、取り返してきた武器をティーダたちに配る。
そして、話題はトンベリに移った。

「包丁でザクザクが主流じゃないのか」
「え?倒した数だけダメージ増える技があったっスよね?」
「歩数ダメージじゃないの?」
「まずランタンの海が回避できないから死亡確定じゃないか。」
「では倒しにくいではないか。」
「テレポを唱えて逃げればいいじゃん」

そう提案して唱えたオニオンナイトだったが、不思議な力でかき消された。

「・・・・・・」
「だ、誰かリバースできないのかな?
そうしたら、レイズやフェニックスの尾、エリクサーで倒せるよ」
「ラストエリクサーなんて使えないっスよ!!
そもそも、リバースってなんスか」
「フェニックスの尾も使っていいわけがない!!
セシルが金持ちだから言えるんだ!!」

セシルがショックを受けて俯いている。彼のところでもエリクサーは貴重な品なのだ。こんなに言われる筋合いはないはずなのだが。
フリオニールはテレポを味方ではなく、敵に唱えるという選択をとろうとした。しかし、彼のテレポはlv.3だった。デス以上に使えるというテレポのレベルが低いのは、基本マリアに任せていたからだ。

「クラウド、君は確かマテリアというものでアビリティや魔法をつけると聞いたことがある。
何かいいものをつけていないか?」
「残念だが、回復系ばかりつけているようだ。エスナとか」
「君は主人公として戦う気がなかったのか。
では、私が一瞬だけ道を作る。そこを全力で走り抜けてくれ」
「?」

ウォーリアは剣を構える。

「走れ、光よ!!」

走り抜ける光と宙に舞うトンベリ。
日頃、見ることなどない光景に開いた口が塞がらなかった。我に返り、出来た道を走り抜けていく。怒り狂ったトンベリたちが走る彼らにランタンを投げつける。
ウォーリアはモーグリのぬいぐるみ胴体にクリスタルを押し込めて、間一髪でランタンに当たりそうになり、セシルにぬいぐるみを投げつけた。受け取ったセシルだったが、目の前に包丁が飛んできたので、とりあえずどこかに投げてみる。ブリッツボールのエースが華麗にキャッチしてみせた。しかし、ランタンにそのまま直撃。瀕死のティーダをクラウドが、ぬいぐるみの胴体をフリオニールが受け止めた。安定の回避率を見せたフリオニールだったが、エントランスに出てすぐに、トンベリキングに気づかずにみんなのうらみを食らいかけ、ぬいぐるみを落とした。それに躓いたオニオンナイトと拾ったティナ。転けたオニオンナイトの方が気になるティナは、彼に手を伸ばした。トンベリがぬいぐるみを蹴り飛ばし、またしても宙を舞う。出入口寸前にいたレイナが受け取り、無事に混乱に乗じて脱出してみせた。
二度とやりたいとは思わないが。
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