第1話 更なる戦いの地に 3/3
こちらはバラムガーデン。
SeeDという魔女討伐ができるような兵士を育成する学園だったが、今の魔女のいない世界では、モンスター討伐依頼を引き受けて維持費にしている。魔女討伐に大きく貢献した彼らも、今は一人のSeeDとしてたわいない生活をしているはずだった。
今日、保健室に運ばれたのはサイファーだった。スコールとの手合わせのはずが、実力の差により手合わせどころではなかったらしい。倒れたサイファーが「メルトンは卑怯だ」と言ったらしいが、いったいスコールがなにをしたのか知りたいとは思わなかった。
そんなサイファーを見舞いに形だけでも行ってあげたキスティスは、次にスコールを探していた。スコールに会いに来た客がいるので、知らせてあげなくてはいけない。この時間なら場所に予想はついている。食堂だ。

「また売り切れか〜!!」

ゼルとスコールは最近パン争奪戦にハマっているようだ(ゼルは元々だが)。言われてみたらあんな事態でもスコールは、食堂のパンだけは死守と命令を出していた。前からパン好きだったのだろう。そこでは悪いが、パンを食べるのは後にしてもらおう。

「キスティス、なんか用か」
「大統領が会いに来てるわよ」
「・・・・・・」

スコールが黙るのも無理はない。エスタの大統領がアポなしで訪問してきたのだ。驚く理由としては充分だろう。特にあのラグナ大統領では。
ラグナとスコールの血縁関係が明らかになったのは、魔女事件後。ラグナがスコールに父だと明かしたのが全てである。明かされたスコールとしては、自分を捨てた父を恨むよりも、呆れた方が上だった。このちょっと馬鹿じゃないか、と思われる男が父だったのだから。
とりあえずスコールは門前払いするわけにいかないので、形ぐらいは会ってやろうと思った。

「なんだ、リノアちゃんいないからテンション低いのか」

スコールの意志など無視して、ラグナは大人しくしているわけもなく、食堂にやって来てしまった。面倒だと切に思う。だが彼が遠慮するなど思っていない。とりあえず何をしに来たんだ。

「当然、父親による授業参観。いいだろ、少しぐらい。見たことないんだしさ」
「連絡は入れるべきだろう。
それに、仕事はどうした」
「いや〜うちの部下は優秀でね。
いいじゃんいいじゃん、サプライズ」

部下に仕事を押し付けてまでして、勝手にやって来たらしい。ワイシャツ、ズボン、便所サンダルの大統領なのだからやりかねない。
気づけば気を使われたようで、ゼルもキスティスもいなくなっていた。スコールにしてみたら、居て欲しかったのだが。
とりあえずスコールは「壁にでも話していろ」と言わずに、付き合ってあげることにした。

「ほら、父が来たんだから、バラムガーデンの案内しなさい。
なんなら学祭でやったもの見せてくれてもいいぜ。」
「わかった、案内はする。」

あくまで案内だけだ。
まずはバラムガーデン内唯一モンスターがいる場所に案内しようか。
訓練所のモンスターなどスコールにしてみれば、草刈りするぐらいのもので、武器一つで始末できる。足手まといになりそうなラグナが、足をつらなければ。スコールは形だけでも紹介してやろうと、ラグナの方を向こうとする。
その瞬間、ラグナがこの学園の仕掛けはすごいな、と本気で思った。何の仕掛けもないはずの天井から、人が落ちてきた。人かどうかがまず怪しいが、黄色い尻尾と白いモフモフしたものだ。
下敷きにされたスコールをラグナは覗きこむ。相当お怒りのようす。大丈夫か、と尋ねようとしたが、大丈夫じゃなかった。
次はラグナとスコールの足場がなくなってしまったのだから。

「うわあぁぁぁ!?」

黄色い尻尾と白いモフモフしたものとスコールとラグナは、まっ逆さまにどこかに落ちていった。
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