第3話 尻尾のある幽霊騒動 4/4
「さすが男。体力がよく持つなー
ちょっと疲れた」

二手に分かれてから一発目にレイナはそう言われる。
旅をした経験はないし、剣術の訓練は自分のペースに合わせてきた。これから先、探索をすることになるなど考えてもいなかったのだ。体力がついていかないことは仕方がない。
考えてみると、マリアはフリオニールの体力についていこうと必死だった。とはいうが、帝国からの侵略から逃れるため、体力はつけてきたから比較してはいけないか。恐らく争いに巻き込まれることはなかったのだろう。
体力不足で倒れられては困る。フリオニールは座れる場所を見つけて、持ってきた非常食の中からサンドイッチを出す。

「疲れると食欲が落ちるから、今のうちに食べたらどうだ」
「そうはいうが・・・・・・貰うとするか。
そういえば、サンドイッチ作ったのはあんたが?」
「あぁ、口に合うか分からないが、どうだ?」
「うん、いいと思う」
「そうか」

話す内容が見当たらないフリオニールと、迷惑をかけているのではないかと思っているレイナ。だんだん気恥ずかしさ故に、サンドイッチの味が分からなくなってきた。

「探索する、か?」
「また疲れたら言ってくれ。無理はしない方がいい」

そうは言われたが、会ったばかりでは言いにくいもの。レイナはとりあえず頷くことにした。
遊園地の中はやけに広いだけで、何か目立って面白いものがあるわけではない。目立つのは、よくあるジェットコースターとメリーゴーランドと観覧車ぐらい。
二人はとりあえず、お化け屋敷に足を踏み込んだ。建物なら仕掛けもしやすいはずだ。そう思ったのだが、入った途端怖さを感じた。どうしたものか。
フリオニールは後ろが重く感じ、慌てて振り返る。そこには下を向いたまま、フリオニールのマントを掴むレイナがいた。

「大丈夫か。出た方がいいんじゃないか」
「来たからには頑張らせてもらう!!
ほ、ほら先に進もう」

怯えている場合ではない。ここは一つ、かっこいいところを見せてやろう。フリオニールは怖さを勇気に変えてみせた。
お化け屋敷といえば機械が脅かすもので、人がいない今は脅かされたりはしないはず。“お化け屋敷”という名前が恐怖を招いている。動くことのないプラスチックの手を見ながら、そう思うように努力する。

「ひゃあ!!」
「うわ!!て、どうしたんだ、レイナ」
「・・・・・・今、なんかが横を通りすぎた」

気のせいだろうと割り切ろうとしたフリオニール。しかし、ポケットに違和感を感じた彼は、財布がないことに気づいた。誰かが横切ったかどうかは分からないが、財布がないことは一大事。そういえば、ここに来た人が財布を盗まれたという話があった。そこと関係しているのだろうか。

「財布がない」
「幽霊が盗んだんだ!!」
「いや、なんで幽霊がギル盗むんだ?
見えないんだから、欲しいもの取り放題じゃないか」
「確かに。女子風呂も覗き放題。
なるほど、フリオニールも憧れるものがあるのか」
「はぁ!?
い、いやらしいじゃないか!!
それはよくないぞ」
「・・・・・・あっ、凄く落ち着いた。なぜだろう」

相手が動揺すると、自分は落ち着くというやつだ。
見えない何かに財布を盗まれた二人は、平常心を失いかけたまま探索を再開する。それを楽しそうに見ている幽霊がいるとは知らずに。
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