愛しい師匠 | ナノ


▼ 29.ぷよぷよエネドラ

忍田本部長が壁を壊してやって来て、如月は自分は不要と判断して数歩引く。
口も悪ければ、それを表すかのように黒いエネドラを見て、三輪が復讐したがる気持ちがわかった気がする。こんなやつにやられたと思うと、自分自身が許せなくなるのだ。
冷たい視線であることに気づかずに、一部始終を黙ってみていた。
エネドラを菊地原と歌川の止めで倒してから、如月はやっと立ち上がり、動く気になった。

「一発殴るぐらいアリだと思うんだがな」
「捕虜でも丁重に扱え」

忍田本部長に言われたら嫌でも実行はする。菊地原と歌川が。
遠征組の二人なら自分よりも扱いは上手いだろう。
エネドラに近づこうとした時だった。
ワープ女の報告は聞いていた。その女がやって来たのだ。しかし、座標があまりに正確すぎる。エネドラが発信器でもつけているのだろうか。
ここでエネドラを食い止めただけでも最大の成果と言える。逃すことは惜しいが、深追いはこちらがやられる可能性がある。
逃がすつもりで黙ってみていたのだが、ワープ女の行動は意外なものだった。
仲間殺しである。
役に立たないと感じて切り捨てた。これは大いにあり得ることだが、如月の思考は動かなかった。
切られた腕が彼女の中で、思考と視界をシャットダウンさせてしまう。

「お、おい大丈夫かよ」
「!!」

座り込んだ彼女は、焦点が合わずに混乱している。
これだけでは済まなかった。トリオン体のまま意識を失ったのである。
強がりで弱さを隠していた彼女が、諏訪の前で醜態を晒したわけだが、逆に今まで耐えていたのだから。

〜第T部END〜
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