愛しい師匠 | ナノ


▼ 29.ぷよぷよエネドラ

諏訪が復活を遂げてから、エネドラが本部に侵入するまで、あまり時間はなかった。
本部のオペレーターやエンジニアが緊急避難しているが、何人か犠牲になったらしい。
訓練室前で諏訪、堤、如月は迎え撃つ準備をしていた。

「仮想戦闘ならダメージを気にしなくていいから楽だろ。
堤がスイッチ入れてこい。そして俺に散弾銃(ショットガン)貸せ」
「射手トリガー使えばいいんじゃないんですか?」
「いや、戦術戦略はバラらしたら駄目だろ。
あえてショットガンで統一すんだよ。元銃手だから安心しろ。諏訪に誤射するぐらいだ」
「てめー、誤射すんなよ」

堤からショットガンを受け取る。毎回この『トリガー臨時接続』のアナウンスが煩いと思う如月である。
奥から豪快な音がして、三人は無駄口をやめた。
本職銃手に先頭を任せたら、まさかの諏訪が腕を一本持っていかれる。
諏訪を過大評価しすぎたと思わないでおいた。思ったら諏訪が可哀想だ。
予定通り仮想戦闘モードに入り、ショットガンでドカドカ撃ちまくる。

『たく、腕をやられるとか馬鹿か』
『あぁ!?ならお前が斬れ、倒せ、前行け』
『嫌だ、無理、しんどい、非現実的』
『つか、あのぷよぷよ野郎、何人か殺ってるぞ』
『……敵討ちはあとでいい。
今はトリガーを調べることが先だ』

不審な動きをしたらすぐに仕掛けが部屋にあることに気づかれる。訓練室に攻撃されたら壊れるはずだ。無敵になれるトリガーがあるなら、皆がつけるはずだから遅かれ早かれ気づかれる。出来る限り、その時間を長くしたい。

「おっ!?」

通り抜けていた音が、何か硬いものとぶつかった音に変わった。急所をカバーしていたのか。
斬るには懐に入り込むしかない。だが、自分の力量では出来ないことは分かっている。
エネドラもさすがにこちらの狙いと部屋に気づいた。如月は範囲攻撃に気づき、諏訪を抱えて回避行動をとる。
目の前に刃があり、間一髪で回避出来た如月は諏訪を雑に投げ飛ばした。

「ひどくねぇ?菊地原との愛の差って奴か」
「まあそうだな。
諏訪には友情すらあるか怪しい。」

諏訪は苦笑いが出た。
はじめて絡んだ時は冗談すら言われなかった。それどころか、こちらを見もせずにスルーして、眼中にすら入れてもらえずにいた。いい進歩だ。関わる人間が増えるだけで、人はここまで変わるのか。なんて、諏訪が考えたわけではないが。

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