愛しい師匠 | ナノ


▼ 28.立方体諏訪

本部に向かって走る。
母親が心配じゃないわけではない。しかし、自分にはやるべきことがある。それに犬飼に任せて問題はないだろう。
あいつが余計なことを言わなければだが。
如月は市街地にトリオン兵が流れていくのを見ながら、頭を働かせた。
今入ってきている情報は、木虎のトリオンキューブ化と敵の目的はC級隊員だと言うこと。
本部にイルガーを送ったのはC級隊員を探すためか。巣を叩いて出てこないなら市街地以外に正解はないだろう。
正隊員を捕まえて駒にするより、素質のあるだろうC級隊員を捕まえる方が確かに効率的と言える。

『如月、聞いてるか?』
「風間?」

風間隊の隊室からだ。
どうやら、風間は緊急脱出したらしい。

『本部に戻るなら、菊地原と歌川と来い』
「お前が緊急脱出か。黒トリガーだな?
はぁ、あの二人その黒トリさんにキレてるだろうな」
『冷静さを失うとは半人前の証だ。
お前にも言えるが。』

通信を切ってやりたいが、切ったら本当にその通りではないか。
言われた通り菊地原と歌川と共に本部に帰ることにする。
人型近界民と戦いたいところではあるが、未知のトリガー相手に戦うならもう少し情報が欲しい。
まずは二人と合流することが先。
菊地原の背中を見つけてグラスホッパーで飛び込んだ。

「なんで飛び込んでくるの?意味不明」
「如月さんも本部に戻るんですか」
「お前たちより素直に、な。」

二人が嫌そうな顔で見てきた。少しは反省しているらしい。治す気があるかは別として。
早速如月は例の黒トリガーについて走りながら尋ねてくる。
思い出すだけで腹が立ちそうな菊地原だったが、ここで無駄な八つ当たりをする気にはならない。

「液体になる」
「天羽みたいな力タイプではなく、迅さんタイプですね」
「うわ、うぜ。迅ってだけでうぜ。
で、風間がやられた技とやらは?」
「いきなりトリオン体内部に敵のトリオン反応が出て緊急脱出」
「き、菊地原。さっぱりした説明すぎないか?
もう少し分かりやすく言ってあげるべきだと思うぞ」
「別にいい。菊地原の言うことはなんとなくわかる。
要するにウザイってことだろ。」

歌川は何から突っ込むべきかわからずにいる。
かなり今更だが、菊地原と如月は出会った当初から話が噛み合っていないことの方が多かった気がする。
告白した際にも噛み合っていなかったんだろうな、と勝手な妄想をした。キューブの諏訪を落とさないようにしながら。
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