愛しい師匠 | ナノ


▼ 26.瓦礫の下

ビルに着地して、近くに誰がいるか探してみる。
おそらく三雲とかいうやつと、嵐山隊が一番近いだろう。
グラスホッパーを出してとりあえず向かうことにした。トリオン兵を市街地に向けているためか、振りかえると本部の周りが静かに見える。
目的は本部ではないのか。ならなぜイルガーを送り込んだのか。
市街地にトリオン兵を送ったとしても、B級ぐらいで始末できる。いざとなればC級にもできるはずだ。
注目すべきはウサギ野郎か。
考えを続けたいが、トリオン兵を排除するためにメテオラを繰り出した。こんなことなら変化弾にするんだった。
大通りに出る。トリオン兵で渋滞らしい。この先に嵐山たちがいるのか。

「……!?」

視界の隅に人の影を捉えた。避難に遅れた人か。
三雲や嵐山たちが見逃してもおかしくない。大人数を避難させているのだから。如月自身も見逃してもおかしくない。
モールモッドが接近していることに気づき、グラスホッパーで急接近して弧月を振った。その人物の前で止まり、倒れこんだその人に手を伸ばす。
足が瓦礫の下敷きになっている。
それより驚いたのは、その人物が如月の母だったことだ。

「は!?家はこっちじゃないだろ」

専業主婦の母が買い物で来ていたのか。
如月は近くのスーパーが閉店でもしたのか思い出そうとする。
しかし、いきなり母に泣かれてしまった。

「可憐なのね。無事だったのね。本当に連絡くれないから、心配で」
「まさか、わざと来たのか!?」

この大規模侵攻で、連絡を寄こさない親不孝者を探そうとしたらしい。
生きなけらば、逢うとかいう問題ではないだろう。

「母は子のためなら死ぬ覚悟なのよ」
「……」
「子供を産めば解るわ」

如月はメテオラを出し、空気を読まない後ろのバムスターに飛ばす。
瓦礫を退かそうにも、トリオン兵が多すぎてできそうにない。
ラービットが来ないとも限らない。そうすれば守りながらは戦えない。
セットしてるのが、完全射手用トリガーなら今なら担いで逃げきれるかもしれない。
変化弾を外すんじゃなかった。後悔してから、周りのトリオン兵を気にしつつ瓦礫を退かした。
一か八かで、担いで走る事にした。
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