愛しい師匠 | ナノ


▼ 21.カッコいい?かわいい?

黒トリガー争奪戦の前にあった遠征よりも数週間前の話である。
複雑と明らかに言っている菊地原の顔。目の前には女の子たち。
意外すぎる光景に歌川は苦笑いするしかない。
ちょうど昨日の話である。
この女の子たちの塾の帰りに起きた話だ。
暗い夜道を帰宅時に通らなければならなく、女の子だけでは少々危ない。
その予想は的中。
柄の悪い男数名に絡まれてしまった。
抵抗して女の子の一人は手を振り払った。
しかし、それが相手に火をしまった。
強く手を掴まれた女の子はさすがに危険を感じた。

「離してよ!!」
「ちょっとぐらいいいだろ?」
「嫌だ!!」
「おい、やめてやれよ・・・・・・」

冷静に呆れた声が聞こえた後、柄の悪い男が宙を舞う。
闇の中から目付きの悪い人が出てきて、あっさり男をダウンさせたのだ。
柄の悪い男たちはこの人に仕返ししてやるつもりだったが、簡単に反撃されてしまった。
そこに菊地原が来てしまったのだ。

「か、可憐・・・・・・これ、なに?」
「ん?あぁ帰るか。
ちょっとハエを叩いたんだ」

このことで菊地原は、学校で女の子に囲まれる事態になった。
もうどうでもいい、と菊地原の目が言うなか、女の子たちはまだ騒がしい。

「あの女の人、めちゃくちゃイケメン!!
菊地原くんのお姉さんなの?
名前呼びだったし」
「・・・・・・」
「歌川くん、知ってる?」
「え」

言っていいものではないだろう。
本人が嫌がるかもしれないし。
菊地原は仕方がなさそうに呟いた。

「ボーダーで世話になってる師匠。」
「そっかー、だからイケメンなんだー
いいね、イケメン師匠」

嫌になった菊地原は、頭を隠すように寝たフリを始めた。
そんな時に限って現れる三年がいる。
コミュニケーション力は絶対菊地原よりある三年生だ。
犬を飼ってない犬飼だ。

「歌川いる〜?」
「犬飼先輩?なんかありましたか?」

意外すぎる客。こんな時になぜ来たのか。
楽しそうに笑う犬飼は、任務のスケジュール表を渡してきた。
遠征に行く彼らにはあまり関係無い話だが。
意外な光景を目にした犬飼は歌川に尋ねた。
菊地原が女の子にモテてると。

「如月さんがかっこいいって話で、みんな菊地原に聞こうとしてるんですよ。」
「いいのかな、かっこいいって。
本人は喜ぶけど、普通かわいいって言われたいよな。
男としては。まあ女の如月なら言われたいはず」
「ですね。」
「・・・・・・たださ、この女の子の中から菊地原のストライクゾーンがいるかもしれないぞ?
浮気しちゃうかな?」

まさか。歌川はそう言おうとしたが、黙ってしまった。
同年代のかわいい女の子に目移りする気持ちは、男なら理解できる。
まあ菊地原にはそうそうない話だが。

「ねぇ、歌川。
可憐はかっこいいじゃなくて、かわいいでしょ?」

解放された菊地原の口からそう聞いた歌川は、かなり安心した。
犬飼先輩が言ったみたいに浮気疑惑は気にしなくて良さそうだ、と。
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