愛しい師匠 | ナノ


▼ 19.入学式の雨

寝息が聞こえる。すでに菊地原は下を向いて寝ていた。

入学式。
歌川は晴れてよかったと思う。
入学式早々雨など悲しいに他ならない。菊地原もいやがるだろうし。
代わりの雨は桜だった。風が強いせいか余計に雨に見える。
興味のない菊地原はさっさと入学式が終わればいいとしか考えていない。防衛任務に行きたくて仕方ないのだ。
適当に3年2年が校歌を歌い、クラスごとに案内される。はじめのHR。
これが終われば学校から出れる。

「つまんない」
「おい・・・・・・」

横で歌川が言うが菊地原は無視をする。
それよりHR(ホームルーム)が終わることを待っているのだ。
クラスに着いて席に座らされる。そこで外の音に気づく。窓が開いていたから聞こえたらしい。
菊地原は余計に早く終わればいいのに、と感じた。

「諸君、入学式おめでとう!!」
「あ、宇佐美先輩」
「やだな〜ぼく帰る」

宇佐美が入学祝いに教室まで来てくれた。
それは良いのだが、菊地原は本当に早く帰りたいのだ。
だからか、宇佐美をさらりと通りすぎて歩み出してしまう。
しかし、宇佐美は追うことを止めさせた。微笑む彼女に歌川は察した。
下駄箱を抜け、玄関を開けて駆け足で進む。桜の雨に興味は沸かなかった。
校門に立つ人しか目に見えていなかったのだ。

「迎えに来たの?別にいいのに」
「バイクで来る気が二日酔いでガンガンする。
飯食うか?歌川はどうした。」
「宇佐美先輩といるからいいんじゃないんですか。
それより刺身が食べたい。」

菊地原の頭を撫でた如月は、そうかと呟いて歩き出した。
高校生菊地原士郎。ボーダー隊員如月可憐。
後に大きなものにぶち当たることになる。
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