愛しい師匠 | ナノ


▼ 18.諏訪に酒を持たすな

人を眺め、荷物を適当な場所に置いた。
狙撃の合同訓練に出るのは久々だった。鳩原のことがあってから、訓練に顔を出していなかった。
自分が言ったことへの後悔と、無力さに押されてしまうことから逃げたわけだ。
荷物を置いてから隣の人物に気づいた。東春秋だ。ボーダー設立して最初の狙撃手。
年下が隣よりいくらかマシだ。年下は騒がしいので好きではない。

「珍しいな。合同訓練に参加するのか?」
「こっちの台詞だ。東が隣か・・・・・・」
「そういえば高校一年組の入学式は明日?」

高校生一年組。菊地原のことを言いたいのだろう。
四月に入り、本当に何も起きないままあっけなく入学式を迎えることになる。大した心配はしていない。強いて言うなら友達が出来るか否かだろう。
歌川と同じクラスじゃなかった場合、誰とつるむ気だろうか。一人とは不安定で脆い。
仲間といるのも不安定で脆い。でも仲間は不安定で脆い最高のエンジンになる。

「ふん。菊地原ならどうにかする。
それより、イーグレットとライトニング、どっちがいいと思う?」
「ライトニングじゃないか?」

固有名詞までは出してない。東は何も突っ込まなかった。
イーグレットを構えた如月は動かない的に向ける。射撃は得意だった。
ネズミの国の射撃アトラクションは高得点。10点満点でバッチをもうぐらいの腕はある。
レーダーと狙撃用トリガーはあまり差はない。風には左右されないわけだし。
問題は如月の集中力にある。集中力事態はかなりあるのだが、わずかな低下が命中率を左右していた。

「・・・・・・ふぅ。
さすがに頭脳派とはいえ、奈良坂みたいにはいかないか。
本当のスナイプなら二次関数が使えるんだが」
「いちいち計算する予定?」
「うぐ。だよな。」
「うまいからいいじゃないか。
はじめに比べたらかなり腕が上がってる。
当て方のコツを理解したな」
「まあな。さすがに一年以上やれば当たる。
相変わらず当真はお絵描きタイムか。
のんきだな。菊地原もあれぐらいユーモアあればいいんだが」

ユーモア丸出しで訓練したら絶対如月が怒る、という謎の矛盾に行き着きながら的を見た。
如月の的はほぼ中心を撃てている。しかし、集中力が持たないのが見てわかる。
的の中心から外れ出した穴は、訓練後半のものだ。まだまだと本人がいう気持ちはわかる。

「飯でも食べにいかないか。
20歳になってから誘ってなかったしな」
「おごりか!?日本酒飲みたいんだけど」
「20歳の女性が日本酒・・・・・・」
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