愛しい師匠 | ナノ


▼ 17.妨害活動

太刀川が騒ぐから、化学で行き詰まっていた米屋までやって来た。
ちゃっかり椅子に座り、満面の笑みで宿題を見せる米屋。
殺意しか芽生えない菊地原だったが、寂しくなり、高校から送られてきた化学の教科書と問題集とノートを持ってきた。
レベルがある種においてバラバラな三人を、まとめて教えるには無理がある。
菊地原は教科書を見ながらある程度問題集をノートに解き進める。

「中性子が計算で出るの?」
「周期表を使えばな。」
「あぁ〜ベンゼンがスルホン化?
えーとベンゼンスルメ酸?」
「と、思うじゃん?
ベンゼンルスホン酸」
「・・・・・・可憐、あれ。」
「ルスホン・・・留守か。
ベンゼンスルホン酸だ。そのまんまだろ。
ちなみにベンゼンがニトロ化したらニトロベンゼンだ。」

かっこよく留守にしてどうするのか。
なぜか高校入試レベル以下から大混乱な太刀川。
Cが炭素ということも、有機化合物もよくわからないまま、ベンゼンなどを口にしている。
ベンゼン環にOHがプラスされたものにも混乱する。基礎問題なんだが。

「ベンゼンオーエッチ!!
ベンゼンって人か」
「それはフェノールだ。」

先の見えない宿題の山に、如月は目を向けなかった。
目を向けたらやれなくなる。
菊地原はやたらと質問を間に挟む。
他の二人の質問を明らかに妨害していた。
風間まで宿題に使うやつらに、如月に宿題を聞く資格はない。菊地原は小さく呟いていた。

「菊地原、悪いな。
用があって話しかけてくれたのに」
「別に。悪いのはここの二人」
「菊地原、おま・・・・・・」
「いや、マジで単位とれない!!」
「単位より常識を気にしろ」

あまりに冷たい対応にその通りだな、と言わざるおえない二人がいた。
米屋はまだ太刀川よりマシだと言いたいようだが、太刀川が比べる対象とは悲しいものだ。
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