愛しい師匠 | ナノ


▼ 17.妨害活動

何も変わらないまま、桜が舞い散る時期になった。
菊地原は桜を恨むような目で眺める。うざかったのだ。
クリスマス、バレンタイン、ホワイトデーをことごとく任務と遠征で潰され、デートなんてしていない。
つまらないつまらない。菊地原はそればかり考えていた。
入学式が始まるまでには一回ぐらいデートをしよう。そう決めて行動に移すまでが長い。
移してからも障害は多い。高校生になる菊地原と20歳の年齢差は障害に過ぎない。
まずボーダーにいる障害の方が問題あるが。
菊地原はボーダー本部ラウンジで早速行動に起こそうとした。
参考書見ながらつまらなさそうに座る如月。こちらに気づいたようで、無表情で手招きしてきた。

「可憐、あのさ・・・・・・」

その先は言い出せなかった。
遠くからうるさい足音がした。うるさい・・・・・・というよりデカイ。
足音というより走っている。
それが誰の足音か、菊地原には聞き分けができた。

「うおおおぉぉぉぉ〜!!」
「!?」
「やっぱり・・・・・・」

太刀川慶とは彼のことだ。
覇気が有り余る顔で迫ってきた太刀川に、如月は平手打ちをかましたが、トリオン体だった。
吹っ飛びはした太刀川だったが、めげずに突撃してくる。
菊地原の存在は忘れ去られていた。
こんな人に妨害された不快感から、菊地原は睨み付けたが意味がない。
笑っているが動揺の心音をさせる太刀川。明らかに自分ではどうしようもない、という表れだった。

「構造式ってなんだ!!
ベンゼンってなんであんな六角形なんだ!!」
「なんでお前は化学をとったんだ!!」
「いや、生物も無理だし。
風間さんに英語。
東さんに歴史や地理。
理系は如月ができる化学で」
「俺は高卒だが。
ついでに言えばあんたの質問。
高校レベルの話なんだが、何歳だお前は。」

呆れた如月は太刀川が手にするものを見た。
宿題、に見える。
問題を解くだけの簡単な宿題など出るのか、大学を出ていない如月は宿題を眺めた。
レポートなら絶対付き合わないと決めていたが、運が悪い。本当に問題を解くだけの宿題だった。

「・・・・・・Hってわかるか?」
「エッチ?」
「水素だ。じゃあOは?」
「ゼロ?」
「なぜそうなる。酸素だ」

まずそこからか。如月は呆れた顔を菊地原に向けた。
菊地原も呆れた顔でお返しした。
元素周期表は中学で習うのだが。
prev / next

[ back ]



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -