愛しい師匠 | ナノ


▼ 16.菊地原の策略

「付き合うからそのカウントとめろ!!」
「言うの遅い」

文句を言う菊地原の余裕を見て、如月は我に返る。
まずい発言をした、と。停止した如月を見て菊地原はちょっと反省した。
理解したあとに真っ赤になって顔を隠した如月をかわいいな、と素直に見ることにした。
赤く熱い如月の頬に冷たいものがついた。
雪だ。菊地原は予想外の展開に携帯を使う。
本部に戻るまでに使う電車が、雪で止まり始めていた。

「な、なんてことを言ったんだ・・・・・・
何歳差だと思ってるんだ・・・・・・」
「あのさ、動揺してるところ悪いんだけど。
聞いてないし。どうしよう」

菊地原は仕方なく歌川に電話を始めた。
無視したらしばらく歌川をいじり倒すと決めながら。

『菊地原?どうした、失敗したか?
み、みんなで慰めるぞ?』
「失敗したこと前提?」

実は歌川は今回の件についてはグルだ。

はじめ如月にどうにかして告白するために、土台を作る必要があった。
普通に告白しただけだと、まともに取り合わない。
菊地原は嫌々ながら演技をするしかなかった。
想いを隠して辛い思いをした少年のふりを。
歌川はその場にいてもらい、如月にその思いを定着させる役。
その間に菊地原は人気のない公園に逃げ込むわけだ。
公園なら逃げても怪しまれない上に告白にはちょうどいい。
念のためトリガーを持っていけば菊地原の所在は把握できる。
宇佐美にはあらかじめ居場所を伝える役にしておいたわけだ。
告白の仕方はちょっと酷いが、動揺させて言わせるやり方しかない。
予想外だったのは雪ぐらいだろうか。

「ねぇ、雪で電車が止まってるみたい」
『え、あぁ・・・・・・ホントだ、雪か。
近くの玉狛に一晩泊めてもらったらどうだ?』
「えー、嫌だなー」
『如月さんの意見は?』
「動揺してて周り見てない」
『菊地原、お前何したんだ』

なにもしてないとぶつぶつ言う菊地原の横で、いまだに動揺している如月がいる。
どうしてこういうときに役にたたないのか、菊地原は呆れながら電話を切って立ち上がった。

「可憐、立って。帰るよ」
「可憐!?
いきなり名前呼びかよ!!」
「うるさいな〜
今1000円しかないんだけど、2000円ある?
3000円あればタクシーで帰れない?」
「は?あ、雪?
あ、こら、手を引くな!!」

菊地原に手を引っ張られて、如月は慌ただしく立ち上がった。
今日は12月14日。菊地原の誕生日である。
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