愛しい師匠 | ナノ


▼ 15.遠征への価値観

菊地原は公園のブランコに座っていた。
とりあえず帰りたくなかった。
意地でも作戦室に帰りたくなかった。
今から2時間前に遡る。

鳩原と会話をしていた如月は、彼女が本題に切り出すのを待っていた。
世間話をしてくる鳩原だったが、如月は無理に本題に移してしまうのはやめておいた。
二宮隊の狙撃手である彼女に意地悪をしたら、隊長に何をされてしまうか、考えなくても理解できた。
目を合わせず話す鳩原。やっと切り出す勇気が出来たのか、目を見てくれた。

「人が・・・・・・撃てないことをどう思いますか」

察しのついた如月は、遠征の話を思い出した。風間隊は確か今回遠征のメンバー入りしていたことを。
あまり遠征にいい価値観を抱かない如月だったが、ここはあくまで聞かれたことだけに答えることにする。

「別に、いんじゃね?」

素直な意見だ。
人が撃てないことがむしろ普通の感覚なのだから、仕方がない話だ。
鳩原は武器を壊せるほど腕がある。気にする必要はない。
しかし、鳩原の反応からそういう意見を求めた訳ではないことに気づいた。
鳩原に不愉快な思いをさせてしまうかも知れない。如月は柔らかめに言う。

「あのな、人が撃てないのが普通なんだがな。
・・・・・・もし撃てないことで仲間が危ない目に遭ったらどうする?
緊急脱出が機能しないかもしれない。その時敵を撃てていたら?
お前はその後悔ができるか?」
「・・・・・・
如月さんなら素直に言ってくれる、と信じてました。」
「これ、多分菊地原にも同じことを言うだろうよ」
「・・・・・・!!
どう考えてますか、遠征へ行くこと」
「嫌だな。
必ず帰ってこれる保証なんてないだろ?
しかも敵のいる場所だぜ?あいつには言わないが、不安というより心配だな。」

それを聞いた鳩原は満足したようだ。
結論が出せたのか、それは如月にはわからない。
とりあえず役にたてたのならいい。その時はそう感じていた。
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