愛しい師匠 | ナノ


▼ 14.年頃の男子たち

「・・・・・・と、思うじゃん?
絶対如月さん、気づいてない。
俺らが気づいてどうすんだか」
「あぁわかるわ。槍バカのわりには分かってるわ。
まあ如月さん、前から鈍感だからな。
風間さん苦労しただろうに」

米屋と出水は、真剣に笑いながら会話していた。
恋バナは男でもしたいもの。特に菊地原と言ういい餌を前にして、しないわけにはいかない。
菊地原の暴走(無駄な努力)は日に日に増すばかり。
鉄棒にぶら下がってみたり、ブラックコーヒーを口にしてみたり。
努力の方向を間違いつつある、菊地原は本気なんだから愉快だ。
最近ではやたらと筋トレをしているらしく、ランニングをしているところをレイジに目撃されていた。

「でもさ、如月さんはどんなタイプが好きなわけ?
これで菊地原が範囲外なら笑う」
「ひで」

本当に無駄な努力にしたいらしい二人。
そこに本当に如月が通りかかる。
少女漫画によくある展開だな、と二人は感じたが言わなかった。
ここに菊地原がいたら完璧なんだが。

「あ、如月さーん。どこいくんですか?」
「出水(でみず)?」
「太刀川隊のいずみです。あと米屋です。」
「どうも〜」

なぜこの二人が自分を引き留めたのか、さっぱりわからない如月。
用事があり、構う気はさらさらなかったのだが、ついつい立ち止まってしまった。
これは菊地原の影響か、と内心笑う。
菊地原のペースに付き合わされ、年下にやたら甘くなった気がしていた。

「で、なんで呼び止めたんだ?」
「如月さん、ボーダーで付き合うなら誰っすか。」
「・・・・・・俺のは参考にならねぇよ。
菊地原だろ?」

出水と米屋は顔を見合わせた。
気づいていることに驚いている。
まさか、菊地原が如月が好きだと気づいているのか。
しかし、そんな様子はまるでない。

「菊地原が好きなやつ、年上だろ?」
「え、なんで」
「菊地原、ごまかす時や嘘をついたり、考える時に人の目を見ないから」

二人は菊地原に同情した。
そんな会話をしたわりには進展がなかったのか、と。
あと、「付き合ったら浮気できねぇな」と内心呟いた。
まあ菊地原が浮気をするか、は別の話だが。
そう言いながら律儀に答えるのが如月クオリティー。

「風間、太刀川、迅、木崎、諏訪、東」
「太刀川さん!?」
「・・・・・・と、思うじゃん?」
「は、嫌だ」
「ほらな。」

出水はちょっと謎の期待をしたのだが、潰されてしまった。
太刀川と如月のペアなんて楽しそうではないか。
米屋としては三輪はいいのか、と思わなくない。母性本能か?
風間がなしというのは意外だったが、考えてみたら似た者同士すぎるのだ。

「菊地原はアリなんですね?」
「・・・・・・は?学生は範疇外だろ!?
犯罪者になる気はない。」

重大なことを見逃していた二人は、声をあげそうになるが、あわてて引っ込めた。
確かに年齢差から如月が犯罪者になりかねない。菊地原が押したとしても。
肝心なことを見逃してた二人は話の流れを自然に還そうとした。
別に土に還すノリではなく。

「いや、菊地原みたいな性格って意味で」
「あぁ〜
ネクラ過ぎてなしだろ。まあ内心ぐらい風間隊なら見分けつくが。
ちょっと面倒じゃないか?
で、もういいか。あてにならないんだから」
「あ、用事あるんですよね。」
「あぁ鳩原に呼ばれている。行ってくるぜ」

去る如月を見て、二人は余計なことを言ったと後悔した。
菊地原が聞いていたら絶対撃沈する話だ。
それに菊地原の無駄な努力が、年齢差を埋めたいという精神的なものから来ると知って、なんだか悲しくなるのだった。
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