愛しい師匠 | ナノ


▼ 13.姉の復讐劇

「脱がさねーの?」
「やめろって。ボスの前だ」

意識が朦朧とするなか、目を開けずに話を聞く。
複数の男の声。嫌な感じだ。多分どこかのホテルだろう。
手足は縛られているようで、逃げ出しようがない。ベッドの上に乗せられているようだ。
床じゃないだけ親切か。論点がずれだしたので、元に戻って考える。
目を開けると、ゴッツイ男と手下らしき人がいる。

「元締めか」
「いい度胸だ。
普通なら今の時点で泣き叫ぶが、冷静に分析してみせるとは。
弟のように脅迫されるとは感じなかったようだな。」
「脅迫?別に男相手に真正面勝負に負ける気はない」
「手足が縛られていては、何をされるかわからないではないか。」
「は?あ、そうか、忘れてた。
でもやる気ないだろ?やるならもうしてる。」

如月は長話をしたいわけではない。
やっと会えた元締めを殴りに来たんだ。単なる復讐にもならない復讐のために。
くだらなさすぎて頭が痛くなる。如月はちょっとだけ我慢してみた。

「君が接触しようとして彼に近づいたんだろ?
下らないな。弟がなんのために脅迫されたのやら」
「・・・・・・?」
「女を連れ込んでるのを見られてな、通報しようとした弟をちょっといじめてやったまで。
その時の動画とこの一言は効いた。
『言えば姉さんがこんな目に遭うぞ』と
あとは優秀な助手のおかげさ」

思い出した。やけに帰宅が遅かった日。
怪我をした様子はなかった。しかし、今の現状から何をしたのか明白だった。
できる限り冷静を保ちながら、如月は鼻で笑い飛ばした。

「くだらん。
私が、こいつはごときに負けると考えてたバカ弟がな!!」
「・・・・・・なに?」
「ついでに言えばあんたらもだ。
俺の弟子は優秀でな!!」

元締めが何かに蹴られて宙を舞う。
見えない何かに動揺する部下。
その間に縛っていた縄が外れている如月。
動揺している部下を蹴り飛ばした。
ここがホテルなどお構い無しのようだ。
元締めが銃を持ち、如月に向けた。相手はのんきに銃刀法違反しか考えていない。
見えない何かに妨害したのだ。

「ちょっと師匠、つっ立ってないで動いてよ〜
死にたいの?」
「いや、来てくれると信じてたから。」
「は、はぁ?勝手にプランのうちにされてたわけ?」

カメレオンを解除した菊地原は、普通に怒っていた。
無茶をされたのが気にくわなかったらしい。
如月は菊地原を無視して、元締めに近づく。麻薬、銃器に手を出している噂を耳にしてはいたので、いろいろと予想内だった。

「殴ろうと思ったが、菊地原がやってしまった。
言っておくが正当防衛だ。これは明らかな正当防衛。
なんならあんたらを銃刀法違反、恐喝、あたりで警察に突き出すだけだ。」
「追加言っときますが、やり返しに来たら、こいつをマスコミに匿名でばらそうかな〜」

気づけば如月と仲良くしていた青年がいた。どうやら元締めの助手らしいが。
USBメモリーを手にして悪い笑みを浮かべる野郎だ。
菊地原は絶対好きになれないと感じだ。
恐らくあのUSBメモリーは、自分の身が危なくなった際に使う切り札だろう。
この青年と如月はあらかじめ手を組んでいたらしい。

「いきますよ、すっきりしたでしょ?ほら弟子くんも」
「いや、菊地原をそう扱ったら噛みつかれるぜ。
主人、風間だろ?」
「・・・・・・」

とりあえず部屋をあとにする。
どうやら話によると如月が説得していたのが、この青年らしい。
ただばれるといけないので、カップルのふりをしていたとか。
ふりにしてはやたらと近すぎる気がする。菊地原はちょっとふて腐れかける。
青年とホテルのロビーで別れることになった。

「如月さん?
演技にしては言い過ぎでしたよ?
本気で恋愛なんてしてないって台詞」
「は?悪かった」
「こっちは割りと本気だったんだが」
「なんか言ったか?」

ムカついた菊地原は、全力で足を踏みつけて去ることにした。
ホテルを出てから如月は大事なことを聞いてきた。
もちろんトリガーの使用許可についてだ。
一般人相手にトリガーの使用は禁じられている。
下手をしたら遠征の話は無しになりかねない。
睨みつけられた菊地原は素直を話した。

「緊急事態だからおとがめなしだって連絡があった。」
「来るならトリガーは使うなよ・・・・・・
まあ期待通りに来てくれたわけだが」
「あの人がいたならいらなかったね」
「あいつには期待してなくて・・・・・・」

じゃあなぜ説得したんだ。
如月のことだから保険だろうが。
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