愛しい師匠 | ナノ


▼ 09.中学生の体育大会

中身はお弁当と飲み物。
気を利かせてか、ペットボトルが二本。一本は凍ったままだった。これなら保冷剤代わりにもなる。
ただ菊地原は、誰が如月にお弁当を忘れたことを伝えたのか気になった。よく考える。歌川はあり得ない。教える前に体育大会はスタートしていた。
なら、あり得るのは佐鳥ということになる。
お弁当を抱える菊地原は素直ではなかった。

「別に頼んでない」
「あ?いらねぇなら今ここで捨てな」

如月がブラックになったころ、歌川が活躍する長距離走が始まった。菊地原は面倒になる前に、お弁当を教室に持っていくために去ってしまう。
残された二人は観戦席から歌川を観ることにした。
長距離走とはいえ4kmや7kmではなく、単純に1km。人によるが5分攻略もあるのだろう。
如月は歌川の疲れた顔を観ることにちょっと飽きた。なんだか可哀想な気がしたようだ。
二人が全く喋らず観戦していると、体育委員らしき生徒が、必死に何か呼び掛けていた。

「保護者の競技は今からでも参加いただけます!!」

保護者競技の人が予想より足りなかったか、やることがないのでやらされたか。保護者というより卒業生がやる競技だろう。
如月は、風間が保護者や卒業生認識されるかちょっと気になった。
とりあえず無視して歌川に視線を戻すと、話しかけられてしまった。

「菊地原くんのお姉さんとお友だちですよね」

笑いを堪えた。
風間が菊地原の友達扱いされたのが、大層愉快だった。
しかし、しばらくして如月は、姉に見られるほどの年齢と自覚してしまった。

「あ?こいつは菊地原の隊長だ。
で、なんだ?」
「保護者競技に参加しませんか?
景品つきですよ」
「ほぉ、如月、行ってこい。
俺はここで観てる」

なぜ保護者競技に出る羽目になったのか。
それは如月が押しに弱いせいだ、とは言わないのが礼儀だ。
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