side.S
もしも、世界の終わりがあるのなら、どんな風に終わると思う?
似つかわしくないセリフをもって問いかけてきた男は無邪気に笑っていた。
何言ってんだと鼻で笑いながらも考える。…考えたところで豊かとは言えない想像力では戦いの荒野で自らが死ぬようなことは思い浮かんでも世界が終わるとは思えなくて、どうだろうなと小さく呟いた声に男は反応したようで。
なら、どんな最期がよくて、どんな最期は嫌?
此方の出方を伺うような、否、子供の好奇心に満ちたような眼差しを向けて男は再度問いかけてきた。
最期…、死に際か?と問いかけても男は笑ったまま言葉を待つ。
死に際で思い浮かんだのは、父と母の最期。兄の死に顔だ。暗い部屋で月明かりに浮かぶ白い肌に濡れた赤。幼心に耐えきれず吐き出したのを覚えてる。今覚えばなんて惨たらしいもんを見せてくれやがったんだ、それでも血の繋がった兄弟かと問えば…きっと兄は困ってるくせに顔には出さず穏やかな微笑みのまま「憎んでもらうためだ」と憎まれ役をかってでた兄は答えるのだろう。最期の瞬間と同じように許せと笑いながら、両親と兄を失ったあとの孤独と闇を思い出していたら、先程まで黙ったままの男が大丈夫かと尋ねてきた。ああ。とだけ返してやれば男は安堵の息を出して小さく笑った。
「太陽が消えて終わる」
男の満開の笑顔…否、男の存在を太陽と例えるのと等しく最期なんて闇しか残らない。
俺が、今、お前を失うのは死に等しいのだといえば男の顔はみるみると赤くなったので、男が思う世界の終わりを聴き逃してしまった。
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