はらはらと白い雪が舞うように降っていた。隣の小さな子供は何が楽しいのか珍しいとばかりにただ冷たいだけの白い雪に手を伸ばしては、子供の甲高い声ではしゃぐ。
小さな子供の寒さで真っ赤になった耳が痛々しいのに本人はそんなこと気にすらしてない様子で雲に隠れた空を見上げる。
つられるように空を見上げても雪の降る分厚い雲はいつもの空の青色を隠して気分まで重くさせるのに子供は雪に夢中のままだ。


「…おい、…いい加減帰るぞ」

寒いのも暑いのも苦手な自分はこれ以上は限界だと言わんばかりに小刻みに震える体をさすっては悴んだ指先に白い息を吹きかけて小さな子供に声をかければ子供は蒼い瞳を丸くさせて小さな手を伸ばして袖を掴む。
そんな子供の仕種が苛立つ。

嘗て自分がそうだったようにあいつならそんなことはしない。覚えてるのは自分よりかは若干暖かいと感じる程度の他人の温い掌の温度と幼い頃の広いままの兄の背中だ。

自分が手を差し出すこともなければ兄のように背中を差し出すこともしないことに小さな子供は何を思ったのか、いつもなら掴んだままの袖を強く引くのでなんだと睨んだところで誰に似たのか子供は物怖じせずに袖を引き寄せる。

「…なんだよ」
「ん、寒そうだから手あっためてあげるってば」
「余計なお世話だ」

大体先程まで冷たい雪に触れていた小さな指先がポケットに突っ込んだままの自分の手より暖かいとは思えなくて、僅かばかりの体温の熱を奪うつもりだろと笑ってやれば子供は強引に袖を引く。
この寒さの中で袖を破られるのは正直適わないのでされるがままに掌を合わせてやれば懐かしいよりも熱いくらいの温度に驚けば子供は懐かしい笑顔で笑って言う。

「へへっ…俺ってばあったかいだろ?」
「…ガキの体温だな」
「なんだとぉ!」

ちくしょう。子供のくせにあいつに似すぎだと小さな独り言をごちたところで雪の滴が頬を濡らした。
















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