第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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名前「……あっ、そうだ。今日はどうしたの?」



今日は「話がある」って言われなかったけど、呼び出されたということはやっぱり何かあるのだろうか。


そういえば、よく思い出してみればUSJのあの場には轟もいた。
彼には自分の個性が生き物を殺すから嫌いだと打ち明けているし、そして目の前でその技を使ってしまっている。
となるとやはり、今日も話は私の個性のことだろう。

どこから話すべきかな、と話のある程度の展開を頭の中で作っておく。


一方轟はというと何故か少し考え込んでいるようだった。
話があったんじゃないのか?と私が首を傾げていると、暫くしてからようやく彼は口を開いた。





轟「………おはぎはおやつに入ると思うか?」





…………うん???


多分今の私の目は、文字通り点になっていると思う。

え、おはぎ?おはぎってあのおはぎ?



名前「……おはぎ、は……食べる時間帯によるんじゃない?朝なら朝ご飯だし、15時とかならおやつ……かな?」

轟「そうか。確かにそうだな……」

名前「う、うん。どっちの属性も持ってるんだよ、多分」



………いや、なんやねんこれ。



思わず関西弁でツッコミ入れちゃったよ。

というかめっちゃ真面目に考えちゃってたよ私、改めて言われるとおはぎはちょっと微妙なラインでわからんよ。
おはぎの属性ってなんだよオイ。

しかも轟めっちゃ納得してくれてるよ、あんためっちゃ良い奴だな。



轟「……わ、悪ぃ。俺、あんまり雑談は得意じゃねえみてえだ……」



……うん、今のでそれは物凄くよくわかった。

轟って実はちょっと天然入ってたりするの?
クールイケメンが実はちょっぴり天然でした、とかどんだけ女を虜にする要素持ってんだこの人は。



名前「……あ、えっと……何か話があったんじゃないの?」

轟「いや、特にねえ」



無いんか。
それであんなに考え込んでいたのか。

無理に話題提示をさせてしまって何だか申し訳ない。

だって頑張って出してくれた話題がおはぎだよ、1周回って才能あるよめっちゃ面白いよ。



轟「……話がねえなら、誘わねえ方がいいか?」

名前「えっ?」



轟の言葉で、考えていたことが全部吹っ飛んだ。



轟「いや……俺はただ、お前のことが知りてえんだ。お前の話を聞きてえ。だから誘った」

名前「お、おお……」

轟「……けど俺は口下手だし、お前みてぇに話を広げるのも上手くねえ。だからもし、俺が誘ったのがお前にとって負担になっているんだったら謝る。悪ぃ」

名前「えっ、ううん!全然!全然そんなことない!」



慌てて頭を横にブンブンと振った。

一匹狼系の轟にここまで言わせる私、自分で言うのもアレだけど結構凄いんじゃないだろうか。



名前「負担なんて、そんなわけないよ!私に興味を持ってくれるのは嬉しいし……それに、私も轟のこともっと知りたいな」

轟「……そう、か?面白みのある人間じゃねえが……」

名前「いやめっちゃ面白かったよさっきの」



思い出して思わず笑ってしまう。

一見近寄り難いオーラを放っているけど、話せば面白いタイプなのかもしれない。

それに、雑談なら私の得意分野だ。



名前「……あ、そうだ!この間ね、桜の花が落ちてたから押し花にしたの!見て見て、これ!栞にしてるんだけど」

轟「……桜か。綺麗だな」

名前「でしょ〜!後でラミネートして、ちゃんとした栞にしようかなって!」

轟「そうか」

名前「轟は、花とか植物は好き?」

轟「……あんまり詳しくはねえが、見るのは好きだ」

名前「そっか!春はいいよねぇ、桜も綺麗だしお花もいっぱい咲いてるし」

轟「ああ、そうだな……」



口数は少ないけれど、しっかりと私の話を聞いてくれているのが伝わった。


私達の (というか主に私の一方的な) お喋りは昼休みギリギリまで続いた。
そろそろ教室に戻らなければならないため、トレーを片付けに行く。



轟「……また、誘ってもいいか?」



戻る時に、轟にそんな事を聞かれた。



名前「うん、もちろん!私なんかでよかったら!」

轟「……そうか」



彼の口角が少しだけ上がってくれたのが、何だか嬉しかった。

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