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《no side 》
自分の部屋へと向かいながら、轟は考え込んでいた。
先程名前が言っていた、「なぜ自分が指名されたのかわからない」という話についてである。
轟は、名前に一目置いている。
強力な個性に慢心せず、レベルの高い武術を身につけている。
共に競い、励まし合える相手として認めているのだ。
だから名前に言われるまでは、彼女が指名を受けたことに違和感を覚えなかった。
彼女がエンデヴァーに認められたのだろうと思っていたのである。
しかし、言われてみれば確かに疑問が多い。
自分の望む個性を持たずに生まれてきた兄や姉には、ある意味無関心だったエンデヴァー。
そんな彼が求めるのは "強さ" である。
戦闘のセンスや才能ならば、名前よりも体育祭で1位だった爆豪の方がやはり上回っているだろう。
エンデヴァーがそれを見抜けないとは思わない。
轟「……アイツ、また訳分かんねえこと考えてんじゃねえだろうな」
思い起こされるのは、父と母の個性婚。
いや、まさかとは思うが……。
拭いきれぬ不安を抱えながら、轟は自分の部屋へと戻ったのだった。
──── 一方その頃、エンデヴァーは自室に篭もり、仕事をしていた。
しかしその脳裏を過ぎるのは、昨日からここへ職場体験に来ているあの少女。
あの少女の個性は、あの "風使い・シキ" の強力な個性がさらに多様化し、進化したチート個性。
特に風は炎を増強させる。
加えて彼女の個性は未だ未知の部分が多く、他にも炎と相性のいい技があるかもしれない。
炎と風、その他の自然現象の融合……。
エンデヴァー『……しかし、まだまだ未熟。融合するならば、より強力に鍛え上げる必要がある……』
轟が危惧した通り、エンデヴァーは密かな野望を抱いていたのである。
これが明るみに出ることはあるのか、否か……。
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