第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


1


(※ オリジナルキャラクターが出ます)


──── 職場体験2日目。



メテオライト「 ──── 個性も体術もいい線をいってる。特に体術は遠距離主体の君の個性の補強になってるな」

名前「は、はい……ゼェゼェ……ありがとう、ございます……」



今日は午前中に保須市のパトロールをし、午後からは私と轟の稽古をしてもらえることになった。
といってもエンデヴァーさんは忙しいらしく、稽古を付けてくれてくれるのはサイドキックの方々だ。

私は、今はサイドキックのメテオライトさんにマンツーマン指導をしていただいているところである。
メテオライトさんは強靭な肉体と『隕石』という超攻撃的な個性をエンデヴァーさんに認められた、若手のヒーローだ。

ちなみに轟も別室で、他のサイドキックの方に稽古を付けてもらっているところである。


10試合ほど戦い終えて一区切りの見えた稽古。
メテオライトさんの穏やかな声で始まった講評を聞いて、私は思わずその場に座り込んだ。
息が上がっていて結構苦しい。

一方メテオライトさんの方は、ほとんど息が上がっていない。
これがプロとの差か、と現実を見せつけられる。



メテオライト「君の体術のセンスは素晴らしい。だが、近距離型の個性を持つ敵に遭遇した場合は話は別になる。やはりノーマルの攻撃では歯が立たないだろう」

名前「っ、!」



先程までの穏やかな声は一転し、厳しい声になった。



メテオライト「君の個性なら遠距離もしくは中距離から相手を牽制できる。だが、万が一のことは常に想定するべきだ。君1人を大勢の敵が包囲する可能性だってある。もし敵に懐に入られたら、今のままでは拙い」



……初めから、わかっていたことだった。

私が得意なのは相手を風での牽制と攻撃。
風以外の技の攻撃力はそれほど高くないため、風を使った遠距離・中距離での戦闘が前提なのだ。
だからもしそれを突破された時のことを考えて、今までずっと体術を怠らずに練習してきた。

だがやはり、メテオライトさんの言う通りである。
8割の人間が個性を持つ社会、ヒーローも敵も個性の使用が前提となっているこの社会で、生身の攻撃では限界があるのだ。

彼の言葉に、ぐっと唇を噛み締めた時。
ぽん、と大きな手が頭に乗る。



メテオライト「……そんなに落ち込んだ顔をするな。先程も言ったが、君は個性も体術も素晴らしい。土台はほぼ完璧だ。特に体術の方は基礎を疎かにせず、日々鍛錬しているのが伝わるものだった。だからここからどう発展させるか、だな」

名前「っ、はい!プルスウルトラですね!」



これが、たくさんの人を救ってきた人の手か。
この手に、少しでも近付きたい。

……なんだか、褒めることや教えることが上手な人だ。



メテオライト「ああ、そうだな。……そこで、なんだがな。先程、風を纏って移動速度を上げ、俺に突きと蹴りで攻撃してきただろう?」

名前「あ、はい。近距離攻撃だとそれが主体なので……」

メテオライト「ああ。その "速さ" は君の武器になるだろう。パワーで負けても、相手が君の動きについてこれなければ君の勝率は上がる」

名前「はい!もっと素早く移動できるようになればいいんですよね!?」

メテオライト「ああ、そうだ。現時点で風を纏ったお前は十分に速い。だが、それは言わば初見殺しのようなものだ。手練の敵ならば直ぐにお前の動きを見切るだろう。そいつらをも、置いていけ。お前の攻撃どころか、姿すら見えないような速さでな」

名前「はいっ!」



敵を、置いていくつもりで。
もっと、もっと速く。

だけど今よりも速く動けるようにするには、どうすればいいのだろう……?
いくら風を多く纏っても、出せる速度には限度があるだろうし……。



メテオライト「……そこで、俺から提案がある」

名前「はっ、はい!」



悩んでいたところに救いの手が伸びてきて、私は勢いよく顔を上げた。



メテオライト「雷を出せると言っていたな?」

名前「あっ、はい。って言っても威力はかなり弱くて、相手の動きを数十秒止める程度なので、不意打ちでの相手への牽制にしかならなくて……。"雷" とか "電気" の個性を持つ人には到底敵いません」

メテオライト「ああ、それでいい。むしろその方がいいだろう。余りにも強い電流では、君の体が耐えられまい」

名前「……え?」



どういう意味だろうか、と私は首を傾げた。



メテオライト「……君は、本が好きだと言っていたな。漫画は読むか?」

名前「はい、よく読みます」

メテオライト「ならばHU〇TER × HU〇TERという漫画は知っているか?」

名前「…………えっ?あ、はい!それ、めちゃくちゃ好きな漫画です!!キメ〇アント編のラストは、それはもう泣いてしまいまして……メル〇ムとコ〇ギのラストシーンもですが、レ〇ナがお母さんの所に戻ってみんなに受け入れられた場面とか、ブロ〇ーダの泣くシーンとか、ちょっとマイナーかもしれないですけどそれはもう……!!」

メテオライト「そうか、奇遇だな。俺もレイ〇とブ〇ヴーダのシーンは泣いたぞ。……そうかそうか。よし、それなら話が早い」

名前「……ん?あの、H×Hがどうかしたんですか?」



なぜ急に、H×Hの話をされたのかがよくわからなかった。

思わず出久のように熱く語ってしまったが……。
こんな所で語り合える仲間を見つけられたのは嬉しいけども、一体なんの関係があるのだろう。



メテオライト「キ〇ラアント編を見たのなら、キ〇アの必殺技の "神速" は知っているな?」

名前「はい、もちろんです!………って、ちょっと待ってください。あの、まさかとは思うんですが、」

メテオライト「勘がいいな。そのまさかだ」



メテオライトさんは不敵に微笑んでいた。


H×H読者でない方々に説明をすると、"神速" とはH×Hの第2の主人公であるキル〇が使える必殺技である。

H×Hの登場人物は体から溢れ出す生命エネルギー(オーラ)を自在に使いこなし、念能力という特殊な技 ──── 私たちでいうと個性のようなものを使える。

キ〇アの念能力が主に電気を扱うもので、その中に "神速" という技があり、これは電気に変えたオーラを身体の末梢神経に直接流し込む事によって、超人的な反射行動を可能にする技だ。

簡単に言うと、自分の体に電気を流すことで物凄く速く動いたり攻撃したりできるようになる技である。

その技を……この人は、私にやれと言っているのだ。



名前「え、あの……マジですか」

メテオライト「マジだ」

名前『マジの目だ……!!』



思わず1歩後ずさりをする。

か、体に電流を……!?
確かに風を纏って移動するよりは格段に速くなるだろう、電気を流すことで生じる体の反射行動で動くわけだし。

その反射行動にプラスして風を纏えば、今よりも高速で……否、もはや光速での空中移動が可能になるだろう。

だけど私は普通の人間だし、キル〇と違って超人的な肉体を持っているわけでもないのに……!!

腕を組んでドッシリと立っているメテオライトさんが、魔王のように見えた。



メテオライト「お前の雷を発生させる仕組みは、体内で生成した雷を出力する、だったか?」

名前「あ、はいそうです!風とか、ほとんどの技がそんな感じです」

メテオライト「ならば、お前の体内はそれなりに電気耐性があるんじゃないか?」

名前「それは……そう言われてみると、確かにそうかもです……」



昔から私は春夏秋冬関係なく静電気が発生しやすい体質だった。
小さい頃は「さっきから痛えんだよお前!!」と勝己に何度も怒られた記憶がある。

だが私の方は痛みを感じることはほとんど無かった。
静電気体質なせいで痛みに慣れてしまったのだと勝手に思っていたが……そもそも私の体は、多少の電気耐性があったということなのだろうか。



メテオライト「技の発動はどのように行う?風穴の時のように手から直接放出するか、それとも竜巻のように空間に発生させるか。どちらだ?」

名前「どっちもできます。ただ、手からの直接放出は風以外だとちょっと苦手で……体力がかなり削られて、少量しか出せません」

メテオライト「……なるほど。俺が考えたのは静電気だ、雷も元々静電気だからな。日常的に発生する程度の静電気ならば、耐性のあるお前なら体内で出力したり、体に纏わせたりしても多少は大丈夫なんじゃないか?」

名前「な、なるほど……!」

メテオライト「だが、体からの直接出力が苦手ならばそれは鍛えるしかない。まずは今よりも電流に体を慣れさせること。そして鍛えて最大出力を上げ、同時に持続できるようにしなければな。……道のりはかなり長いだろう、地道な訓練になる。どうだ?アネモネ」



私はグッと拳を握りしめ、真っ直ぐにメテオライトさんを見上げた。



名前「いけます!絶対に完成させてみせます!!」

メテオライト「その意気だ、雄英生」



ふ、とメテオライトさんの表情が和らいだ。

彼の表情から、希望を感じた。


<< >>

目次
戻る
top
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -