第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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──── その日の放課後。

鞄に物を詰めていると、何やら廊下が騒がしいことに気づく。



麗日「な、何事だーーーっ!!?」



お茶子の可愛らしい声につられて顔を上げる。

そこで目に入ってきたのは、A組の入口の前に集まって教室を覗き込んでいるたくさんの生徒達。
あれでは通れない。

マジで何事!?



峰田「んだよ出れねえじゃん!何しに来たんだよ!」

爆豪「敵情視察だろザコ。敵の襲撃を耐え抜いた連中だからな、体育祭の前に見ておきてえんだろ」



そう言って怯むことなくズカズカと人混みに近付いていくのは勝己だ。
もう帰るらしく、スクールバッグを持っている。

彼はA組を覗きに来た人達の前に立ちはだかった。



爆豪「そんな事したって意味ねえから。どけモブ共」

飯田「知らない人のこととりあえずモブっていうのやめなよ!」



勝己ってば、思い切り喧嘩売ってる……。

委員長が相変わらずのロボットのような動きでツッコミを入れていた。

すると……。



?1「……噂のA組。どんなもんかと見に来たが、随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍するやつは皆こんななのかい?」

爆豪「あ゙あ゙?」



人混みを押しのけて前に出てきたのは、紫色の髪が特徴的な生徒だった。



?1「こういうの見ちゃうと幻滅するなぁ。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入った奴結構いるんだ。知ってた?」

爆豪「……あ?」

?1「そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる」



「俺ら」ってことは……。
この人ももしかして、本当はヒーロー科志望だったのだろうか。



?1「体育祭のリザルトに寄っちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしい」



その男子生徒の言葉に息を飲んだのは出久である。

私はというと、へえ〜そうなんだ!と興味深く話を聞いていた。
編入の話、全然知らなかった。

するとその男子生徒はじろりとA組の教室内を見渡す。



?1「……敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とはいえ調子に乗ってっと足元ごっそり掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」



勝己を目の前にしてそんな事を言えるとは、なかなか大胆不敵な人だ……。
肝が据わっているのか、自信があるのか。

その男子生徒は勝己と睨み合っていた。


すると、「おうおう!」とまた別の声が聞こえてくる。



?2「隣のB組のもんだけどよォ!!敵と戦ったっつーから話聞こうと思ったんだがよォ!!エラく調子づいちゃってんなオイ!!」



な、なんかまた不敵な人来た……!
話し方がいかにもヤンキーである。

何やらまだ叫んでいるが、勝己はガン無視して人混みを通り抜け始めた。
「無視かテメー!」とB組の人が怒っている。



切島「待てコラ爆豪!どうしてくれんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか!」



帰ろうとする勝己を慌てて引き止めたのは切島である。

しかし勝己はチラリと切島を振り返ると、「関係ねえよ」と言い切った。



爆豪「上に上がりゃ関係ねえ」



まるで宣戦布告をするかのように睨みをきかせて言い放った勝己。

そしてそのまま彼は帰ってしまった。



切島「……くっ、シンプルで男らしいじゃねえか……!!」

上鳴「え」

砂糖「言うねえ」

上鳴「は?」

常闇「上、か。一理ある」

上鳴「いやいや騙されんな!無駄に敵を増やしただけだぞ!?」



上鳴が1人で頑張ってツッコミを入れている。
何だか意外だと思いながらも、その光景を横目に私は再び荷物を詰め始めた。

すると、後ろにいた出久にトントンと肩を叩かれる。



名前「ん?出久どうしたの?」

緑谷「名前ちゃん、今日はかっちゃんと帰らないの?朝も1人で登校してたみたいだけど……」



出久の言葉にドキリと心臓が跳ねた。

……これは私と勝己の問題だ。
出久に心配をかけるわけにはいかない。

そう思い、咄嗟に笑顔を張りつけた。



名前「……うん。暫くは、ちょっと」

緑谷「そうなの?もしかして、何かあった?大丈夫?」

名前「何もないよ、大丈夫!ありがとう。じゃあまた明日ね、出久」

緑谷「う、うん。じゃあ……」



" 大丈夫!"

それは出久に言ったはずなのに、無意識に自分に言い聞かせているように思えた。

少し心配そうな表情を向けてくる出久にヒラヒラと手を振って、私は教室を出た。

すると、後ろからパタパタと足音が追ってくる。



耳郎「名前、1人?一緒に帰らない?」

名前「あ、帰る!」

耳郎「実はさ、来る途中で新しいパン屋見つけたんだけど行かない?生食パンが美味しいらしいよ」

名前「生食パン!?行きたい行きたい!1斤食べるわ!」

耳郎「それは食べ過ぎ……」



響香の誘いは凄くありがたかった。
1人でいると、勝己のことを考えてしまうから。

その後は美味しい生食パンを1斤と5、6個のパンを平らげて、響香との会話に花を咲かせることに集中していた……。

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