第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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──── 翌日。

学校に行けば、話題は体育祭の余波についてで持ち切りだった。



名前「おはよー!なになに、みんなテンション高いね!」

芦戸「あ、聞いてよ風花!超声かけられたの、来る途中!」

切島「ああ、俺も!」

名前「え、すごい!有名人だね!」



やはりテレビ中継の効果はかなり大きいらしく、登校の際に声をかけられた生徒はかなり多いらしい。

特に三奈や切島は見た目も派手だから、印象に残るのだろう。



葉隠「私もじろじろ見られてなんか恥ずかしかった!」

尾白「葉隠さんはいつもなんじゃ……?」

瀬呂「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ……」

蛙吹「ドンマイ」

瀬呂「うわああーーーっ!!」



頭を抱えて叫ぶ瀬呂を見て、私はケラケラと笑う。
良くも悪くもみんな注目を浴びているらしい。

すると、「そういえば名前ちゃん」と梅雨ちゃんに声をかけられる。



蛙水「私、昨日お出かけしていたのだけど……爆豪ちゃんと手を繋いで歩いてなかった?」

名前「えっ」

芦戸「えーーーっ!!なになに、デート!?ついに付き合ったの!?仲直りのついでに、的な!?」

名前「で、デート!?つ、付き合っ、……!!?」



三奈の言葉に私は目を白黒させた。

確かに昨日は一緒に出かけたけど、まさか見られていたとは。
いやでも別に、普通に出かけていただけだし恥ずかしがることなんて……。



名前「ち、違うよ!?別にそんなんじゃなくて、普通に……スイパラに行ってきただけ」

芦戸「いやもうデートじゃんそれ!手繋いだんでしょ!?」

名前「いや、繋いでたっていうか、無理やり引っ張られてたっていうか……」



恥ずかしがることなんてない、私にとっては普通のこと。

……そのはずなのに、何故かどんどん顔が熱くなっていく。
三奈に言われれば言われるほど、デートだったのかもしれないと思ってしまうのである。



名前「と、とにかく、デートじゃないって!べ、べべ別に私はそんなつもりなくてっ……わ、私からすれば普通のことだよ!勝己となんて、よくスーパーとか一緒に行くし!日常!日常でしかないから!!」

芦戸・切島・瀬呂『『『なんかめっちゃ焦ってる……珍しい!!』』』



そうだよ、デートなわけがない。

勝己がそんなこと考えるなんて思えないし。
ていうかそもそも勝己が私をデートに誘うなんてありえない。

……だけど、どうしてこんなに顔が熱いんだろう。
勝己と出かけただけなのに、そんなの今までもたくさんあったのに。


火照った顔をパタパタと仰いでいると、ガラッと教室のドアが開いた。

やば、先生来た。
私を含め、立っていた皆は瞬時に席に着く。



相澤「おはよう」

全員「「「おはようございます!」」」



あぶねー、間に合った。
立っていると怒られるからな。

だけど席に着いたことで目に入るのは、ふさふさの薄い金髪とガタイのいい背中。

思わずドキッと心臓が跳ねるが、何とか平静を保つ。


やっぱり昨日からなんだか変だ、私……。

そんな事を思いながらも相澤先生に目を向ける。
……なんだか久しぶりに彼の顔をちゃんと見た気がする。



蛙水「相澤先生、包帯取れたのね。良かったわ」

相澤「婆さんの処置が大袈裟なんだよ。ンなもんより、今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ」



先生の言葉に、教室内には一気に緊張が走った。
恐らく抜き打ちの小テストを警戒しているのだろう。

雄英ってそういうところあるからなぁ……。

皆が内心冷や汗をかいて焦る中、相澤先生は徐に口を開いた。



相澤「……" コードネーム "。ヒーロー名の考案だ」

全員「「「胸膨らむやつきたぁぁぁぁ!!!」」」



ヒーロー名!?やばい、めっちゃわくわくする!!

皆も席を立ち上がって喜んでいたが、先生が放った殺気で即座に教室は静まり返った。



相澤「というのも先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2、3年から。つまり、今回1年のお前らに来た指名は将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」



うわあ、めっちゃ脅してくるじゃん……。
というかそもそも、私に指名なんて入っているのだろうか。

蘇るのは体育祭での準決勝の記憶。
完全に私情が入ってしまった試合だし、おまけに涙まで見せてしまった。
3位という結果は一応残せたけれど、今回の私の行動を評価してくれるプロヒーローがいるとは考えづらい。



葉隠「頂いた指名がそのまま自身へのハードルになるんですね!」

相澤「そう。で、その指名の集計結果がこうだ」



そう言って先生がリモコンを操作すると、黒板に名前と数字が映し出された。

おおお、ハイテク……。


轟  4123
爆豪 3425
風花 1672
常闇 360
飯田 301
上鳴 272
八百万 108
切島 68
麗日 20
瀬呂 14


……ん? ん!!?
せ、せんっ……!!?

目につくのは、上から3番目の数字。
5度見するも、「風花 1672」という数字は変わらない。



相澤「例年はもっとバラけるんだが、3人に注目が偏った」



ま……マジか。
もし私がプロヒーローだったら、あの試合の私なんて評価しないのに……。

それに、轟と勝己の指名数がすごすぎる。
轟に関しては2位だったのに、勝己の指名数を抜いてるし。



相澤「この結果を踏まえ……指名の有無に関係なくいわゆる職場体験ってのに行ってもらう。お前らはUSJの時一足先にヴィランとの戦闘を体験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」



なるほど、それでヒーロー名か……。

めっちゃわくわくしてきた!楽しみ!



相澤「まあそのヒーロー名はまだ仮ではあるが、テキトーなもんは ─── 」

ミッドナイト「付けたら地獄を見ちゃうよー!」



相澤先生の言葉を遮るように割り込んできた声。

ガラッとドアが開き現れたのは、ミッドナイトである。



ミッドナイト「学生時代に付けたヒーロー名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!」



ミッドナイトはそう言って、なんともセクシーな歩き方で教壇に立った。

朝から物凄い色気だ。
刺激が強いよ、ミッドナイト……!



相澤「まァそうゆうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」



そう言って相澤先生はいつもの黄色い寝袋を取り出した。

また寝る気だ、この人……。
ちゃんと家で寝てるのかな。



相澤「将来自分がどうなるのか名をつけることでイメージが固まりそこに近づいていく。それが "名は体を表す " ってことだ」



そう言いながらもそもそと寝袋に入る相澤先生。

いい事言ってるのに、なんだかなぁ……。


あっという間に眠りの世界に入った先生を視界に入れながらも、私はヒーロー名に思いを馳せるのだった……。

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