第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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──── 連れて来られたのはショッピングモールの一角だった。

白と焦げ茶色を基調としたオシャレな空間に漂うのは、甘い匂い。

ここって……。



名前「スイパラ……?」



もしかしなくてもここはスイパラだ、スイーツの数が答えを物語っている。

なぜここに連れて来られたのかはわからないけど。

初めて来る場所なのでキョロキョロと辺りを見回していると、何やら1人でどこかに行っていた勝己が戻ってきた。
そして、「ん」と渡されたのは小さな紙……食券だ。
あ、スイパラって食券制だったんだ。



名前「あ、ありがとう。あの、いくら?払うよ」

爆豪「は?要らねえわ」

名前「えっ、なんで!?駄目だよそんなの」



スイパラって結構高くなかったっけ?

ブンブンと首を横に振っていると思い切り舌打ちをされた。
酷い。



爆豪「奢ってやるっつってんだから奢られとけや!いつものがめつさはどこ行ったんだ気持ち悪ぃ」

名前「き、気持ち悪いって酷くない!?人の誠意をなんだと思ってんのさ」

爆豪「だったら俺の誠意も受け取っとけや!」

名前「え、えええ!!?」



まさか、勝己の口から「誠意」という言葉が出てくるなんて。

スイパラを奢ってくれるのが勝己の誠意……?
私、勝己に何かしたっけ……?

首を傾げながらも席に荷物を置き、とりあえずスイーツを取りに行く。


いくつかのケーキを取って席に戻れば、既に勝己はワンプレートと共に席に座っていた。

勝己の皿の上は真っ赤に染まっていて……って、待て待て。



名前「勝己、何その赤い皿……」

爆豪「あ?激辛フェアやってんだよ。テメェこそなんだ、その皿。見てるだけで胸焼けするわ」

名前「スイパラだもん、スイーツ食べるのが普通でしょ」



お互いがお互いの皿をドン引きした目で見つめていた。

しかし「激辛フェア」という言葉に、ああそれでか、と納得した。

勝己の好物は辛い物全般。
スイパラになんて来る人間じゃないのだ。

それにしても赤すぎる、見てるだけで辛いというか痛い。
唐辛子丸ごと刺さってるし、どんな料理?


一応私のことを待っていてくれたらしく、私が席に着いてから勝己は食べ始めた。

皿の上の赤はあっという間に勝己の中に消えていく。
何この人やばい、味覚死んでるの?


大量の赤を視界に入れながらも、とりあえず私もスイーツを食べまくる。

めちゃくちゃ美味しい。
チョコケーキ美味い、あとレアチーズケーキ。
ミルフィーユも美味しい。


勝己は真っ赤なスープを飲み干していた。
いや激辛スープはやばいでしょ、下手したら喉焼け死ぬって。



名前「……ねえ、勝己」

爆豪「あ?」

名前「……なんで、連れて来てくれたの?」

爆豪「……激辛フェアやってるからっつってんだろ」



勝己は私の顔を見ることもなくそう答えると、再びバクバクと激辛フードを食べ始めた。



名前「……嘘だ」

爆豪「あ?嘘じゃねーよ」

名前「……だって勝己、隠し事してる時私の顔見ないもん」



チッと舌打ちをされる。
面倒くさそうに彼の瞳が私をとらえた。

見たところ、理由のうちの半分は激辛フェアだけど、もう半分は何か別の理由があるといった顔をしている。

一通り食べ終えたらしく、勝己は箸を置いて大きな溜息を吐いた。



爆豪「……疲れた時は」

名前「……え?」

爆豪「だから、疲れた時はって聞いてんだよ」



一体何の話だろうかと首を傾げるが、ふとある言葉が思い浮かんだ。



名前「……疲れた時は、甘い物……?」

爆豪「……嫌な事は」

名前「……美味しい物食べて、全部忘れる」



" 疲れた時は甘い物に限るよ!"

" 嫌な事は、美味しい物を食べて全部忘れよう!"


これは、私が昔から口癖のようによく言っている言葉だ。
嵐太や風優だけではなく勝己や出久、最近だと轟にも言った気がする。

もしかして、スイパラに来たのは私のため……?
私が喧嘩の時にした嫌な思いや寂しい思いを、忘れさせるため……?



名前「……ふふふ」

爆豪「……ンだよ」

名前「私、勝己のそういうところ大好きだな」

爆豪「っ!? あ゙あ゙!!?」



何でも器用にこなす彼だが、彼が私に与えてくれる優しさは本当に不器用だ。
だからこそ、ポカポカと胸が温かくなってくるのだ。

彼のそんな所が好きだと言えば、目を見開いて怒る彼。

だけどその顔は耳まで真っ赤だ。
勝己のこの表情はなかなかレアい。



爆豪「クソ女、調子乗ってっとぶっ飛ばすぞ!」

名前「そんな赤い顔で言われても……」

爆豪「……てめ、後で覚えとけよ……」

名前「うわっ、ごめんって!あはは!」



こうやって話していると、ああやっと元に戻ったんだと実感する。
ここ2週間はポッカリと穴が空いたようだった。

その穴を埋めるように、その日は勝己とのお出かけを楽しんだのだった……。

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