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準決勝の第1試合は轟と委員長。
恐らく今戦っているところだろう。
その次はいよいよ私の試合だ。
控え室で待機していると、ガチャッとドアが開いた。
切島「風花!」
上鳴「よっ」
名前「あっ、切島に上鳴!てか切島、大丈夫!?」
切島「おう、このくらいどうって事ねえ!」
やって来たのは切島と上鳴だ。
切島の頭には包帯が痛々しく巻かれている。
どれだけ激しい攻防だったのかがそれだけで伝わってきた。
上鳴「次、爆豪とっしょ?今までみたいに吹っ飛ばしてこいって!」
切島「ああ、応援してっからよ!仲直りもできるといいな!」
名前「2人とも……本当にありがとう」
どうやらわざわざエールを送りに来てくれたらしい。
きっと委員長と轟の試合も見たいはずなのに、本当になんて優しいのだろう。
おかげで少しだけ緊張が解れた気がする。
笑顔で頷けば、切島にわしゃわしゃと頭を撫でられた。
すると、会場の歓声が一際大きくなり、拍手も聞こえてきた。
切島「……お?終わったか」
名前「そうみたい。……よし!行ってくる!!」
上鳴「頑張れよ!俺らも客席で見てっから!」
名前「うん、ありがとう!」
笑顔で送り出してくれた2人に感謝し、手を振って私は控え室から出る。
少し廊下を歩くと、前の方から見覚えのある紅白頭が歩いてきた。
名前「あっ、轟!お疲れ様!どうだった?」
轟「風花か。勝った」
そう言った轟は、やはり前よりもすっきりとした顔つきになっている気がする。
名前「えっ、すごい!決勝じゃん、おめでとう!」
どうやら委員長vs轟の試合を制したのは轟だったようだ。
見たかったなぁ〜!
パチパチと拍手を送るが、轟は私の目をじっと見つめていた。
な、なんだ……?
名前「……ど、どうしたの?私の顔に何かついてる?」
轟「……お前この間、俺が苦しそうだって言ったよな」
名前「う、うん……?」
そういえば、そんな事を言った気がする。
何も聞かないのかと聞かれて、轟が苦しそうだから聞かないって答えたんだっけ。
だけど、どうして今そんな事を……?
轟「……どうしてお前にはわかっちまうのか、あの時は不思議だったが……今ならそれがわかる」
名前「うん?」
轟「今のお前は、苦しそうだ。一体何に追い詰められてんだ?」
そう言われて、ドクリと心臓が跳ねた。
追い詰められてる……私が?
そんな……そんなことは。
名前「……別に何もないよ、大丈夫」
轟「……言いたくねえならいい。だがクラスの連中は皆お前のことを心配してる」
名前「えっ……」
響香と切島と上鳴にしか打ち明けていないはずなのに。
そんなにわかりやすかったのか、私は。
まさか、皆に心配かけていたなんて……。
悔しくて申し訳なくて、ああ私は本当に駄目だ。
思わずギュッと拳を握りしめた。
轟「……引き止めちまって悪かった」
名前「……ううん。なんかごめんね、もしかして轟にも心配かけちゃってた?」
轟「いや……俺は、」
そう言いかけて、一瞬口を閉じる轟。
なんだか彼の瞳に吸い込まれてしまいそうで、私はじっと彼を見ていた。
轟「……俺は、今のお前の……消えちまいそうな笑顔を見たくねぇだけだ」
それだけ言うと、轟は踵を返してその場から去っていってしまった。
消えちまいそうな笑顔、って……。
なんだかその言葉がグサリと胸に刺さった。
ちゃんと笑えてなかったんだ、と。
私は、どんな時でも笑顔でいなきゃいけないのに。
あの子たちのために。
名前「……っ、集中しなきゃ」
パンッと両頬を叩き、私は再びフィールドへと向かった。
──── そして。
《準決勝二戦目!なんと、幼馴染同士の対決だァ!ここまでお互い圧倒的な戦闘センスで勝ち上がってきた、爆豪 VS 風花!!》
今日で3度目のフィールドに立つ。
そんな私と対峙するのは勝己である。
勝己と戦うのは、これが初めてだ。
ミッドナイト「2人とも、用意はいい?」
勝己から目を逸らさずに、ミッドナイトの言葉に頷く。
勝己もまた、私を睨みつけていた。
……そして、いよいよ。
ミッドナイト「スタート!!!」
──── ドォォォォンッ……!!!
ミッドナイトの声が会場に響き渡る。
それとほぼ同時に、勝己の爆破による爆風と、私の放った強風がぶつかり合った……。
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