第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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名前「どこ行っちゃったんだ……?」



出久を探してうろうろと会場を歩き回る。

会場内を隈無く探してもどちらも見当たらないというのは、なんだかおかしい気がする。



轟「 ──── 俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ?万年No.2のヒーローだ」



しかし、突如聞こえてきた声に私は思わず足を止める。
轟の声だ。

学校関係者専用入口と書かれた場所から聞こえてくる。
一体誰と話しているのだろう。
盗み聞きなんて趣味じゃないのに、つい聞き耳を立ててしまう。

それにしても、轟があのエンデヴァーの息子だったとは。
確かにそう言われると、彼の左目はエンデヴァーに似ている気がする。



轟「お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら、俺は尚更勝たなきゃいけねえ」



No.1ヒーローの何か……?

No.1ヒーローとはオールマイトの事だ。
一体何の話をしているのだろう。



轟「親父は極めて上昇志向の強い奴だ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、それだけに生ける伝説オールマイトが目障りで仕方なかったらしい。自分ではオールマイトを超えられねぇ親父は、次の策に出た」

緑谷「何の話だよ、轟君……?僕に、何を言いたいんだ?」



次に聞こえてきたのは出久の声。
轟と話していたのは出久だった。

しかもなんだか、不穏な空気なように思える。



轟「……個性婚、知ってるよな?」

緑谷「……!」

轟「超常が起きてから、第二〜第三世代間で問題になったやつ……自身の個性をより強化して継がせるためだけに配偶者を選び、結婚を強いる。倫理観の欠落した前時代的発想。実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み、母の個性を手に入れた」



個性婚の話……?
まさか、轟は。

ゴクリと唾を飲んだ。



轟「俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってこった。鬱陶しい……!そんな屑の道具にはならねぇ」



彼の言葉は憎しみの色に染まっていた。

轟が、そんな辛い内情を抱えていたなんて……。

最近よく話すようになった友人であるだけに、私は酷くショックを受けた。
何も知らずにバカみたいな話ばかりを彼にしていた今までの自分に嫌悪感を抱く。



轟「記憶の中の母はいつも泣いている……。お前の左側が醜いと、母は俺に煮え湯を浴びせた」

緑谷「っ!!」

名前「……っ、」



声が上がらなかったのが幸いだった。

出久が息を飲んだのと同時に私も息を飲む。
左側の火傷は、そういう理由があったんだ。



轟「……ざっと話したが、俺がお前につっかかんのは、見返すためだ。クソ親父の個性なんざなくたって……いや、使わず一番になることで、奴を完全否定する」



それで頑なに氷結ばかりを使っていたのか。
それが何故出久へつっかかることに繋がるのかはよくわからないけど……。

彼らに見つからないうちにと思い、私は静かにその場を去る。
謝るのはまた後にしよう。


……私と反対側の通路に勝己がいて、同じく轟の話を聞いていたとは思いもしなかったが。

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