第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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──── 第二種目は騎馬戦だった。


基本的なルールは普通の騎馬戦と同じである。

ただ違う点が一つ。
この騎馬戦はポイント制であり、ハチマキを取られてもアウトにならず、ハチマキを取り返すチャンスがあるという。

そしてそのポイントは障害物競走での順位によって割り振られるということだ。
そのポイント数にはかなり偏りがあり、2位や3位が200p程度なのに対し、1位の出久は1000万p。

なんだあのデタラメな数字は。
雄英、急に馬鹿になったのか?

とにかく下剋上が可能な種目になっており、1位の出久が極端に狙われやすいという何とも無茶苦茶な騎馬戦である。

チーム決めの時間は15分。
その間に作戦も立てなければならないため、かなり短い。



ミッドナイト「それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」



ミッドナイトがそう宣言なり、私はみんなに囲まれた。



耳郎「名前、ウチと組もう!あんたのサポートならウチ絶対できるから!」

名前「あっ、響香」

緑谷「ちょちょちょ、ちょっと待って!名前ちゃん!僕と組んでほしいんだ!」

上鳴「風花、俺と組もうぜ!!俺らが組めば相性とか最強だって!」

蛙水「名前ちゃん、私と組んでほしいわ」

名前「え、え、えええっ!?」



詰め寄ってくる4人に思わず後ずさる。

すると、さらに「風花」と声をかけられた。



轟「風花、俺と組まねえか?」

名前「あ、轟……」



遅れて現れた轟に、げっと4人が顔を顰めたのがわかった。

みんなの考えていることはわかる。
2位と4位は保持ポイントが高いため、一緒に組むと合計ポイントもかなり高くなる。
そうなると点数的に追いつくのが難しくなるし、轟の個性はかなり強力だから厄介なのだろう。


しかしこれはつまり、私からすればチャンスということだ。
みんなは私を誘ってくれているし、この中から3人を選べばいい。


出久は保持ポイントが高すぎて誰よりも狙われるだろう。
しかしそれは裏を返せば、守りのみに徹して出久のハチマキをキープすれば問答無用で勝てるということになる。

敵を近づけさせないためには近付く前に潰せばいい。
それは私の得意分野だ、竜巻や雷を発生させて敵を近付けさせなければいい。
第一種目は温存していたので体力は有り余っている。


あとは私と同じく遠距離攻撃を得意とする轟。
彼の戦闘能力は非常に高く攻撃的であり、尚且つ氷結は防御にも使える。

そして、一緒に過ごした時間が長い響香。
息を合わせることが大事な騎馬戦では、なるべく瞬時に意思疎通のできる人がいい。

上鳴と梅雨ちゃんには申し訳ないけど、この3人で確定かな。



名前「……うーんと、じゃあ、」



と、指名をしようとした時だった。

──── ガ シ ッ



名前「いだだだだだだ!!?」



後ろから頭を鷲掴みにされた。

痛い、めっちゃ痛い!!!
こんな乱暴なことをしてくる人は1人しかいないので、見なくてもわかる。



名前「勝己、痛い!いたたたた!」

緑谷「か、かっちゃん……!?」



出久を初めとする私の周りに集まっていた5人は、ドン引きした表情を見せた。

そりゃそうだ、私が勝己に頭を鷲掴みにされて引きずられていくのだから。

じたばたと暴れるが、勝己は私を見ることもなく何かを言うこともなかった。

彼の力に敵うはずもなく、私はされるがままになってしまったのである。




一方その頃、残された5人は……。



耳郎「ああもう、連れて行かれちゃったよ……。最近の名前と爆豪、なんでかわからないけどギクシャクしてたのに、こういう時は組むんだね」

蛙水「爆豪ちゃん、すごい形相だったわね」

上鳴「こ、怖ェ……2、3人は殺ってる奴の目付きだったぜ……目付きだけで人殺せるって、あれ……」

緑谷「……多分、だけど……蛙水さんと耳郎さんはともかく、僕と上鳴君と轟君が名前ちゃんと話しているのが嫌だったんだと思う……」

上鳴・耳郎「「うーわ、めんどくさ……」」

蛙水「……ギクシャクはしていても、名前ちゃんへの独占欲はあるのね」



……爆豪が聞いていたら、5人とも瞬殺されそうな内容である。







名前「 ──── ほぎゃっ」

切島「うおっ、風花か!あんなに囲まれてたのによく連れて来れたな、爆豪!」



ようやく手を離してもらえたかと思えば (それもかなり乱暴に)、目の前にいたのは切島と瀬呂。
どうやらこの二人も勝己と組むようだ。

連れて来たっていうか、無理やり連行されてきたんだけど……。

ちらりと勝己を見ればこっちを見るなとばかりにめちゃくちゃ睨まれるし、私に拒否権は無さそうだ。



名前「あ、えっと……よろしくね、二人とも。私、頑張るね!」

瀬呂「おう!風花がいりゃ百人力だな!」



私の真似をしてガッツポーズをしてくれる瀬呂。

しかしそれとは対照的に、切島は少し心配そうな表情をしていた。



切島「ちょ、ちょっといいか?風花」

名前「あ、うん。何?」



ちょいちょいと手招きをされて彼の傍に行けば小声で耳打ちをされる。



切島「おめえ、爆豪と仲直り出来たのかよ?」

名前「あー……実はまだ……」

切島「……大丈夫なのか?このチームじゃ気まずいだろ。それにその様子だと無理やり引っ張ってこられたんだろ?」



どうやら私のことを心配してくれているらしい。

確かに気まずいことは気まずいけど、私は勝つために今日はここに立っているのだ。

チームメイトとの協力が勝利に不可欠である以上、私情を挟んで迷惑をかけるわけにはいかない。



名前「ううん、大丈夫!切島と瀬呂とは戦闘訓練の時も一緒だったし、きっとこれも何かの縁だよ!それに多分勝己も勝つためだって割り切ってるんだと思うし、そのために私が必要なら協力しなきゃ」

切島「いや、それはそうかもしれねえけどよ……つーか、爆豪がお前を誘ったのは多分それだけじゃねえと思うが……」

名前「え?」

爆豪「いつまで引っ付いとんだ、離れろや!!!」

名前「おわっ!?」

切島「うおっ!?わ、悪ぃ悪ぃ」



こそこそと二人で言葉を交わしていると、いきなり勝己が割り込んできた。

肩を掴まれたかと思うとベリッと効果音が付きそうな勢いで引き離される。

なんだか今日の勝己はよくわからない。
誰かと話していれば無理やり引き離されるし、かといって勝己に話しかけようとしても睨まれるし。


そんな事をしている間にあっという間に時間は過ぎ、いよいよ試合の時間となった。

私のポジションは右馬である。




ミッドナイト「スタート!!!」




そして、ミッドナイトの合図で騎馬戦が始まった。

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