第二章 体育祭〜職場体験 | ナノ


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──── 切島や上鳴との仲が深まってから、3日後。

いよいよ今日は雄英体育祭当日である。
しかし勝己とは未だ話せていないまま、ついにこの日を迎えてしまった。

入場するまでの時間を、私達は控え室で過ごしていた。



耳郎「 ──── ねえちょっと、名前ってば!」

名前「へあっ!!?」



突然肩を揺すぶられ、思わず変な声を上げてしまった。

ハッとして隣を見れば、響香が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。



耳郎「あんた、大丈夫?最近おかしいよ、授業中もずっとぼーっとしてるじゃん」

名前「あ……だ、大丈夫大丈夫!ちょっと緊張してるのかも!」

耳郎「そうなの?……てかそれよりさ、今の聞いてた?」

名前「あ、ごめん……なんだっけ」



何故か私に小声で話しかけてくる響香は、何かを指さした。

その方向を見れば、轟と対峙する出久の姿が。
轟の瞳は明らかに出久を敵視している。


轟がおはぎの話をしてきたあの日から、私は彼とご飯を食べることが増えていた。
響香とお昼を食べた次の日は轟と、そしてまたその次の日は響香と、というようなサイクルで学食を食べている。

だけど今の轟の瞳は、いつも私に向けてくれるものとは全く違う、冷たい瞳だった。



名前「……えっ、何事?」



出久が自分から喧嘩をふっかけるとは思えないし、恐らく発端は轟の方だと思う。

だけどその理由がよくわからない。

私が困惑していると、「やっぱり聞いてなかったか」と響香は肩を竦めた。



耳郎「轟がさ、緑谷に宣戦布告したの」

名前「せ、宣戦布告!?なんで!?」

耳郎「さあ……。よくわかんないけど、めっちゃ敵視してるっぽい。それに緑谷もそれに応えてた」

名前「えええ、そうなんだ……」



轟がどうしてそこまで出久にこだわるのかが全くわからない、今まで話しているところも見たことがないし。

轟は強いし、正直敵に回したくないタイプだ。
そんな人に宣戦布告されるなんて、本当に大丈夫かな、出久……。
なんだか先行き不安だ。


その時、ふと視線を感じてそちらを見れば、勝己が私の方を見ていた。



名前「……あ、……」



目が合うのは久しぶりだった。

私が視線に気付くと思っていなかったのか、私が勝己を見れば彼の瞳が驚いたように揺らいだ。

だがそれも一瞬のことで、鋭い視線を向けられる。
完全に敵視されているようだ。


耐えられなくて、私は思わず視線を逸らしてしまうのだった……。

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