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名前「 ──── っっっ!!!」
声にならない悲鳴。
目がチカチカするほどの激痛が走る。
思わず彼の背中に爪を立ててしまった。
私を抱きしめる彼の腕に、ますます力が篭る。
……だがその激痛はほんの数秒続いただけで、そこからは徐々に痛みが薄れていった。
さっきのはきっと、彼の気遣いだったのかもしれない。
長い間私の体を痛みに晒すより、一気に終わらせてしまう方がいいと考えたのだろう。
原田「……名前……」
彼の熱い吐息がかかる。
切なそうな表情の彼。
彼と繋がったのだという実感が、今になってようやく湧いてきた。
……どうしよう、嬉しい。
目頭がじんわりと熱くなり、涙が頬を伝った。
原田「……痛むか?」
彼は、どこまでも私を気遣ってくれる。
そんな彼の優しい問いかけに、私は首を横に振った。
名前「……嬉しい、の……」
声が詰まって、それだけ言うのが精一杯だった。
……ああ、どうしよう。涙が止まらない。
嬉し泣きなんて、人生で初めてかもしれない。
涙で視界が歪み、左之さんの表情がわからなくなった。
彼の指が私の涙を掬い、優しく口付けられる。
原田「……俺もだ。愛してる、名前……」
耳元で囁かれ、それがまた私の涙腺を刺激する。
だけど、世界一愛しい人からの愛の言葉に、私の顔は綻んだ。
名前「 ──── 左之さん、大好き」
お返しのように耳元で囁けば、切なそうに眉を寄せる彼。
吸い寄せられるように、私たちは再び唇を重ねた。
舌を絡め取られ、軽く吸いつかれ、飲み込みきれない唾液が口端から顎先へと伝い落ちていく。
……そして私は、時折彼が少しだけ苦しそうに眉を顰めていることに気付いた。
きっと、このままでいるのも辛いのだろう。
名前「左之さん……動いても、いいよ……?」
小さな声で言えば、彼の瞳が大きく見開かれた。
原田「……しかし、」
名前「私なら、大丈夫……もうそんなに痛くない、から……」
原田「……すまねえ、名前」
私が彼の頬を撫でれば、切なげな瞳が私をとらえた。
そして彼はゆっくりと、ゆるく律動を始める。
突き上げられる度に、痛みではなく甘い何かが湧き上がってくるのを感じた。
………だけど。
名前「……っ、」
原田「……名前っ……」
名前「……っ、さの、さ……」
……どうしよう、苦しい。
声を堪えるのが、どんどん苦しくなってきている。
名前「……もっ、むりっ……!」
堪えた息の合間に言葉を押し出す。
ハッとしたように、左之さんは律動を止めた。
原田「す、すまねぇ……痛むのか?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくる彼。
……痛くはない、むしろ気持ちいい。
だから何と答えればいいかわからず、咄嗟に返事ができなかった。
原田「……声、気にしてんのか?」
逃げようとした理由を当てられ、どきりと心臓が跳ねた。
嘘の付きようがないため、目を逸らして小さく頷く。
すると、彼の顔がフ、と綻んだ。
原田「声くらい聞かせろよ……恥ずかしがるこたァねえ。お前の声は変じゃねえ、綺麗だ」
耳元で囁かれた息が熱い。
再び彼は、ゆっくりと律動を開始する。
……恥ずかしい、けど。
正直、これ以上我慢するのはキツい。
名前「……ん、あっ……左之さんっ、ふ、あっ……!」
思い切って体の力を抜けば、彼の律動に合わせて自然と声が零れる。
……ああ、どうしよう。
すごく、気持ちいい。
原田「名前っ……!」
名前「んっ、あっ、左之さんっ……左之さんっ、ひ、あぁっ!」
お互いに何度も名前を呼び合う。
徐々に彼の動きが激しくなり、私の足がガクガクと震え始めた。
名前「やっ、あぁっ!は、激しっ…ふ、あっ…!」
原田「……気持ちいいか、名前っ……?」
名前「あっ、んっ……ふあぁっ、きも、ちいっ……!」
一層激しくなる突き上げに、私は必死に左之さんにしがみついて身悶える。
……そして先程も味わった、体の奥底から何かが這い上がってくるような感覚。
名前「あっ、左之さっ、もっ…ひあっ、だ、だめぇっ…!」
原田「名前っ……俺も、だっ……」
切なげに眉を寄せる左之さんの顔が目に入る。
そして ────
彼の熱がギリギリまで引き抜かれたかと思うと、一気に奥を力強く突かれた。
その瞬間、全身に電流が流れるように快感が走り抜ける。
名前「ひあっ、ああああっ!!」
原田「……っく、!」
頭の中が真っ白になる。
ガクガクと痙攣する私の身体を、左之さんが掻き抱いた。
そして、お腹の上に迸る白濁の熱を感じながら、私の意識は薄れていく……。
原田「名前、愛してる ───」
意識を失う直前に囁かれた愛に、私の瞳からは再び涙が零れたのだった……。
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