桜恋録ニ | ナノ


1


《 名前 side 》


名前「 ──── あー楽しかった!!」



私は先程敷いた布団にゴロンと寝転がった。

お風呂から上がった後はめちゃくちゃ美味しいご飯を食べて、大満足した私。

そしてついさっきまで千鶴の部屋でずっとお喋りをしていた。
私としてはもうちょっとお話していたかったんだけど、千鶴が少しうとうとしていたので今日はもう寝ようってことになったんだ。

それにしても、浴衣の千鶴も可愛かったなあ( *¯ ¯*)ムフフ

それに、やっぱり千鶴は一君のことが好きみたい。
まあわかってたことだけどね!

私に指摘されて真っ赤になった千鶴は本当に可愛かった。
どうやったらあんな可愛い子に好いてもらえるんだよちくしょー!!!
一君になりたいわ、切実に!!

だけど、千鶴の恋は応援するって決めてるもんね。
さてさて、どうやってあの2人をくっつけようかしら……。

『苗字の恋のキューピット大作戦』と勝手に名付けて、あれこれ妄想しながらぐふぐふニヤけていた時だった。



原田「 ──── 名前、起きてるか?」

名前「あ、はーい!」



返事をすれば、スッと襖が開いて左之さんが現れる。

彼の手には徳利と猪口があった。



原田「よう」

名前「やっほー!あれ、新八っつぁんと平助は?」

原田「早々に酔って寝ちまったよ」



左之さんいわく、2人のいびきが煩くてこっちに避難してきたのだとか。

確かにそんな煩い所で1人でお酒を飲んでも美味しくないだろう。



名前「じゃあ私がお酌するよ」

原田「悪ぃな。……何だか今日は、飲み足りなくてな」



そう言って困ったような顔をしながら、布団の近くにどっかりと座る左之さん。
どんな左之さんも絵になるぜ、ちくしょー。

私はいそいそと左之さんに近づき、彼の猪口にお酒を注いだ。
彼はゆっくりとお酒を味わい始める。



原田「……今日の酒は、お前と飲んだ方が美味いな」

名前「え、お酒って誰と飲むかでそんなに味変わるの?」

原田「そりゃあな。男3人で飲むのも悪くはねえが……」


──── 今日は、お前の気分なんだ。


そう言って優しく笑った左之さんにノックアウトしました( ゚∀゚)・∵. グハッ!!

鼻血出そう、無理。
この状況で普通にお酌できてる自分めちゃくちゃ凄いと思う。

左之さんって全ての行動において破壊力がやばいんだよね。
さすがお色気担当・歩く18禁だ。



原田「……どうだ、久々に羽根を伸ばせたか?」

名前「……えっ、あっ、うん!すっごく!料理がめちゃくちゃ美味しかった!久々に動けなくなるまで食べちゃったよ〜」

原田「そうか」



私の話を聞いてくれている時、私を見る左之さんの目はとても優しい。

そんな彼の目を見る度に、ドキッとしてしまう。
ああ、私は本当に左之さんが好きなんだなって思うよ。



名前「……あ、あとお風呂!露天風呂がすっごい気持ちよかった!」

原田「……そうだな、いい湯だったな」

名前「ね!景色もすごくよかったし!」



そう言ってお酒を注げば、左之さんは少し困ったような顔になった。



原田「……お前らな、でかい声で騒ぎすぎだぜ?こっちまで丸聞こえだったぞ」

名前「え、嘘!?どこから聞こえてた!?」

原田「………"色白で顔も髪も綺麗で足も長くて胸も綺麗"……だったか?」

名前「ほぼ最初からじゃんか!」



マジかよ聞かれてたのかよあれ!!
通りで新八っつぁんの声がめっちゃ近くから聞こえると思ったわ、絶対壁1枚隣にいたわ……。

うっわ、あれ聞かれてたのは恥ずかしすぎる!!

……と、1人でおろおろしていた時だった。



原田「………なあ、名前」



──── あの時と同じ、低い声。

それに気づいた私は、咄嗟に身を固くした。
左之さんの大きな手が私の腰に回り、彼の元へと引き寄せられる。



原田「名前……」



愛おしそうに目を細めて、私の名前を口にする彼。
彼のもう片方の手が、私の頬を優しく撫でた。

………や、やばい。
こういう雰囲気久しぶりすぎて、めちゃくちゃ緊張するんですが。

思わず身を引こうとするが、腰に添えられた彼の手がそれを許してはくれなかった。

そのまま彼の端正な顔が近付いてきて ───
柔らかくて温かいものが、私の唇に押し当てられる。

一瞬唇が離れて、ほとんど重ねたままで左之さんが低い声で呟く。



原田「……好きだ、名前……」



火がついたのかってくらい、一気に顔が熱くなるのを感じた。
それとほぼ同時に、再び口を塞がれる。


……な、なんか、さっきよりも長い。
戸惑っていれば、左之さんの舌が私の歯列を優しくなぞった。

驚いて思わず退こうとするが、大きな手が私の後頭部を押さえつける。
まるで、「逃がさない」と言われているようだった。


そして私の口内に、左之さんの舌が入り込んできた。
逃げ回る私の舌を、優しく絡め取られる。

……息の仕方がわからない。
いや正確には、声をこらえて息をする方法がわからない。

苦しくて左之さんの着物を少し引っ張れば、彼はようやく解放してくれた。

しかし一呼吸おけば、すぐさま口付けをされる。



名前「……んっ……ふ、あ……」



堪えきれず、自分のものとは思えないような声が漏れる。

左之さんの舌はもっと激しくなって、気づけば私もぎこちなくそれに応えていた。
蕩けてしまいそうなほどの甘い口付けに、体の力が抜けていく。

声を堪えるのがどんどん難しくなっていって、
─── トン、と軽く肩を押された。


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