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《原田 side 》
千鶴「色白だし髪も顔も綺麗だし足も長いし……」
名前「……ち、千鶴?」
……何だか聞き覚えのある声が聞こえて、俺は閉じていた目をゆっくり開いた。
今は新八と平助と露天風呂に浸かっているところなのだが……。
目の前にいる新八と平助も、「ん?」と不思議そうな顔をしている。
……まさか、この壁のすぐ向こうに女湯があるのだろうか。
千鶴「胸もすごく綺麗だよね……!」
名前「千鶴どうした!?」
聞こえてきた会話に、風呂の中で思わず足を滑らしそうになった。
……千鶴でもそういうことを言う時もあるのか。
名前ならともかく、千鶴は意外だな。
つーか、こっちに丸聞こえだぞお前ら……。
平助と新八に至っては、顔を真っ赤に染めている。
……まさか、人の女で変な想像してるんじゃねえだろうなお前ら。
名前「待って千鶴、なんか目が据わってるよ怖いよ」
千鶴「……名前の触ったら、私も大きくなるかな……」
名前「……いやあの、そんな神社みたいなことはないからね?『ご利益あります』みたいなものじゃないからね?」
藤堂「……オ、オレ、ちょっとのぼせてきたから先に上がる!!!」
会話の先を想像してしまい聞いていられなくなったのか、平助が真っ赤な顔のまま慌てて風呂から出ようとしている。
………しかし、
千鶴「お、お願い!少しだけ!」
名前「仕方ねえな愛する千鶴の頼みだ!!」
千鶴「ありがとう!失礼します……!」
そんな会話が聞こえた瞬間、風呂から上がりかけていた平助が足を滑らして、再び風呂に落っこちた。
物凄い水しぶきが上がる。
永倉「平助!?大丈夫か!?」
頭から風呂に落ちた平助を見て、新八が驚いたように声を上げた。
……そういうお前も鼻血出てるが大丈夫か?
原田「………おい、中に戻るぞ」
……自分でも驚くほど、低い声が出た。
永倉「……さ、左之……そんなに怒るなって。今のはさすがに不可抗力だろ……?」
原田「別に怒っちゃいねえよ」
口ではそう言ったものの、言葉とは裏腹に不機嫌そうな声が出てしまう。
あまりにもわかりやすすぎる自分に、心の中で思わず苦笑いした。
……だが、此奴らが名前の体を想像するのが不愉快で仕方ねえ。
俺だって、まだ見てねえんだぜ?
千鶴「あ、ありがとう……!ご利益ありそう!」
名前「いやあの、私の胸を拝まないで……」
その間にも、絶えず聞こえてくる会話。
新八と平助は、俺から逃げるように慌てて露天風呂から出ていった。
……いやもう遅せぇだろうが。
"千鶴「色白だし髪も顔も綺麗だし足も長いし」"
"千鶴「胸もすごく綺麗だよね……!)"
先程聞こえてきた千鶴の言葉が、脳内でずっと回っている。
……あー、くそ。
こんなの、想像しちまうじゃねえか。
大きな溜息をついて、俺はその場を後にするのだった……。
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