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──── それは、ようやく眉毛が前髪で隠れるようになった頃のことだった。
名前「慰安旅行?」
意外すぎるその言葉に、私は思わず聞き返していた。
近藤「ああ。たまには日頃の疲れを取ることも必要だろう。それで、苗字君と雪村君も一緒にどうだろう?」
名前「は、はあ……」
私は思わず、千鶴と顔を見合わせる。
──── 先刻、私と千鶴は新選組幹部が集まる部屋に呼び出された。
何か大変なことでもあったのだろうかと不安になりながら話を聞いていたのだが……。
不安とは裏腹に、その内容は慰安旅行を計画したというものだった。
と言ってもそう遠くへは行かず、京の中で済ますらしい。
全員一気に行って屯所を留守にするわけにもいかないので、隊ごとに別れて行くのだとか。
まず1日目にいくつかの隊が行き、2日目にその隊が帰ってきたら残りの隊が入れ違いで出発するという。
その旅行に私と千鶴も来ないか?というお誘いだった。
名前「で、でも……隊士の方々の為の旅行なんですよね?何だか申し訳ないですし、私は留守番してますよ」
土方「お前は大人しく留守番なんて出来ねえだろうが。お前は無理やりにでも連れて行く」
名前「(; ・`д・´)ナン…ダト!?」
私は強制参加かい。
どんだけ信用されてないんだよ私は。
さすがに留守番くらいは出来るっつーの!
土方さんの発句集読んで大人しく過ごすのに!!
近藤「雪村君はどうかね?」
千鶴「わ、私は……その、名前が行くなら一緒に行きたいです!」
名前「愛してるよ千鶴」
千鶴「えっ!?」
沖田「千鶴ちゃん、その子の隣は危ないからこっちにおいで」
名前「おい私の千鶴に触るな」
全く、私から千鶴を奪うなんて!!
沖田さん許すまじ!!
名前「ところで、慰安旅行って何処に行くんですか?」
土方「温泉だ」
名前「いいですね!めっちゃ慰安旅行って感じですね」
土方「慰安旅行だからな」
温泉か。
何気にめちゃくちゃ久しぶりだ。
それに、温泉旅行は行ったことないな。
いつも日帰りだったし。
あ、めっちゃ楽しみだわ。
土方「……よし。じゃあ初日と2日目どちらか選べ」
名前「はーい。えーと、……」
確か初日が二番組・三番組・六番組・八番組・十番組。
2日目が一番組・四番組・五番組・七番組・九番組と近藤さん、土方さん、山南さんだったはず。
原田「お前は初日だ」
名前「そこも強制かい」
原田「当たり前だろ?」
少し考えていれば、左之さんが口を挟んでくる。
まあ、どっちにしろ左之さん達と行きたかったからいいんだけどね。
わかったと返事をすれば、ガシガシと頭を豪快に撫でられた。
藤堂「じゃあ千鶴もこっちか?名前と一緒がいいんだよな?」
千鶴「うん、できればそれでお願いしたいな……」
土方「そうか、わかった。……それじゃ、源さんに斎藤、大変だろうが此奴らを頼むぞ」
井上「あいよ、任されました」
斎藤「承知致しました」
土方「おいお前ら、迷惑かけんじゃねえぞ。特に苗字」
名前「何で私だけ名指し!?」
……そんなこんなで、私達は温泉旅行に行くことになりました。
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