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土方「 ──── おい、終わったぞ」
名前「ありがとうございます」
私はふるふると顔を振って顔に付いた髪の毛を落とし、目を開けた。
すると ────
何故かギョッとしたように目を見開いている土方さん。
名前「……え、なんですか?」
土方「……………いや、なんでもねえ」
名前「ちょっと、今の間は何ですか!あと何で目逸らすんですか!」
なんかもう、嫌な予感しかしないんですけど!!
名前「ちょっと土方さん、鏡貸してください!」
土方「……知らぬが仏という諺を知っているか?」
名前「絶対失敗してるじゃないですかそれ!!!」
私は土方さんの机を無理やり漁って鏡を発掘し、慌てて自分の前髪を確認する。
名前「…………ぎゃーーーーーーっっっ!!!???」
土方「うるせえ叫ぶんじゃねえ!!」
名前「叫びたくもなりますよ、何ですかこれ!!眉毛出ない程度でって言ったじゃないですか!!どうしてくれるんですか!!」
土方「これしきのことで騒ぐな!!」
名前「これしきのことじゃないから騒いでるんです!!!」
鏡で見た自分の顔は、にょっきりと眉毛が見えていた。
肝心の前髪はというと、眉毛よりも1cmくらい上で切りそろえられている。
いやどうやったらこんな大胆にミスるんだよ!!!
名前「ほぼおかっぱじゃないですかこれ!幼子の髪型と変わらないですよ!!」
土方「それなら尚更お前にぴったりじゃねえか」
名前「ちょっとどういう意味ですかそれ!!」
ひいいい、どうしようこれ!!!
誤魔化しの利くレベル超えてるよ!!!
切ったばかりなのに、伸びろ伸びろと念じながら前髪を引っ張る。
名前「……こんなのみんなに見られたくない……」
土方「すっきりしていて良いじゃねえか」
名前「良くないですよ!私の9割くらいは前髪でできてるんです!!前髪の無い私なんてそれはもう私じゃないです!!」
土方「さすがにそれはねえだろ」
ああああどうしよう!!
平助や新八っつぁんに爆笑される未来も見えるし、沖田さんにからかわれる未来もめちゃくちゃ見える!!
それに……。
名前「……左之さんに嫌われたらどうしよう……」
土方「……お前そんなこと気にしてるのか」
名前「そんなことどころじゃないですよ!!一番重大な問題です!!」
こんなオン眉でドン引きされたらどうしよう。
私にはオン眉似合わなすぎるのに!!これで嫌われたらもう私生きていけない!!!
土方「原田はそんな男じゃねえだろ。お前だってわかってることだろうが」
名前「でもこれは論外です!左之さんだってさすがにこんなオン眉女と一緒に歩きたくないと思います!!」
土方「……いいじゃねえか、可愛げがあって」
名前「すみません、それなら目合わせて言ってもらえます?」
くっそ、他人事だと思って!!
あとで発句集を近所の子達に読み聞かせしてやる!!
……と、その時だった。
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