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藤堂「……やっぱり、未来から来たっていう名前とオレ達とじゃ、価値観とかそういうのが違うんじゃねえのかな」
ポツリと平助が呟いた。
……確かに、そうなのかもしれねえな。
意向のすり合わせってのは難しいもんだな……。
永倉「それもあるだろうなぁ。……それから手を引いちまうお前も、優しいんだか弱気なんだか」
……新八の言う通りだ。
今の俺は、自分でも信じられねえくらい弱気だ。
だがそれには、理由があるんだよな。
原田「……彼奴は、今までの女とは違うんだ」
永倉「……まあ確かに、あんな面白え女の子は滅多にいねえよな」
新八が笑いながら、俺の猪口に酒を注いでくれる。
俺は少しの間、波打っている酒を見つめていた。
原田「……俺は、女ってのはただ黙って男の後ろをついて来ればいいと思っていたんだがな。……だが彼奴には、隣に居てほしいと思ったんだ。初めてそう思える女に出会ったんだよ。一緒に馬鹿やって笑い合える女なんざ、今までいなかったからな。……だからな、彼奴に怯えられて逃げられちまうのが何よりも怖ぇんだ」
俺はそう言うと、猪口の酒を一気に飲み干した。
藤堂「……本当に大事なんだな、名前が」
平助はそう言って微笑んだ後、俺と同じように一気に酒を飲み干す。
原田「あたりめえだ。……あんなにいい女、世界中探したって他に見つからねえよ」
永倉「っかー!仲睦まじ気で羨ましいぜ!」
藤堂「しっかし左之さんにここまで言わせるなんてさ、名前って結構凄い奴なんだな」
永倉「ある意味男泣かせだがな。理性との勝負だな、左之」
原田「全くだ」
そう言って俺らは笑い合う。
……と、その時。
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