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木の上で鳴いていたのは黒くて可愛らしい子猫。
名前「……って、怪我してるの!?」
「ニャアー」
名前「そっかそっか、痛かったねぇ。今手当してあげるからね」
子猫の小さな足は血で汚れていた。
カラスにでもやられたのかな、可哀想に……。
とりあえず私は猫を抱き上げたまま近くの太い枝に腰掛け、手拭いをビリッと破く。
完全に応急処置だけど、それを猫の足に巻き付けた。
名前「これでよしっと。下に降りたらちゃんと手当してあげるからね」
「ニャア」
名前「よしよし。……さーて、そろそろ降り、」
そこまで言いかけて、私は思わず言葉を切った。
………待って、高くね?
こんなに高い所まで登ってきたのか私は。
地面が随分遠くに見える。
猫を片手に抱えて、もう片方の手だけで木に掴まりながら降りるというのは……さすがに無理な気がする。
というか、足が竦んで降りられない。
名前「……やばい、どうしよう……」
「ニャアー」
名前「……私も、君と同じになっちゃった……」
「ニャア」
……まずいな、日が沈んで暗くなってきた。
暗くなってしまえば、見つけてもらえる可能性は低い。
ましてや私がいる所は葉で覆われているのだ、木の下に来なければ私の姿は見えないだろう。
名前「……巡察の人達が帰って来たら助けを呼ぼう」
「ニャア」
名前「ごめんね、痛いよね。もうちょっとだけ待ってね」
「ニャアー」
子猫をよしよしと撫でながら、私は小さく溜息をついた。
その時だった。
──── ポツ……ポツ……ポツ……
葉に滴る雫。
名前「……えっ、嘘でしょ」
なんと、雨まで降ってきたのだ。
さっきまであんなに晴れていたのに!
名前「……君も私もツイてないねぇ」
「ニャア……」
だけど大量の葉が傘になってくれているおかげで、雨はそれほど当たらない。
少し空気もひんやりとしてきたけれど、子猫の温かさでそれも緩和されそうだ。
名前「早く誰か来ないかなぁ……」
「ニャア……」
私と子猫の声だけが、その場に響いた……。
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