桜恋録ニ | ナノ


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──── ようやく梅雨が明けたのか、今日は天気がよかった。

最近は雨ばかりで、本当に退屈だった。
梅雨はいい事ないよね、外にも出られないし刀と苦無が錆びるから手入れはめんどくさいし。

久しぶりの晴天だったから誰かとお散歩に行こうかなと思ったんだけど、思ったよりも仕事が長引いて終わらず夕方になってしまったので残念ながら無理そうだ。

仕事っていっても、残っているのは今やってる庭の掃き掃除と夕餉の当番だけなんだけどね。

最近になってやっと土方さんから脇差を返してもらえて、炊事当番も復活したんだ。


それにしても最近、だんだんと暑くなってきた。

ついこの間、左之さんと桜を見に行った気がするのに。
あれからもう3ヶ月も経ったのだ、早いものだ。


……だけど、3ヶ月も経つのに、左之さんは一切私に手を出してこない (1回だけそういう雰囲気になりかけたけど私がぶち壊した)。

いや別に手出してほしいわけじゃないんだよ、なんかそういうの怖いし。

ただ、私の中の左之さんは手が早いイメージだったからちょっと意外だったというか。


そんな感じのことをポロッと千鶴にもらしたら、「大事にされてるんだね」って物凄い満面の笑みで言われた。

めちゃくちゃ可愛かったし私が千鶴を大事にしたい。

……そんな事を考えながら、庭の掃き掃除をしていた時だった。


──── ニャー……



名前「………ん?」



どこからか、猫の鳴き声が聞こえた。

だがその声はとても小さくて、どこから聞こえたのかわからない。
今度はしっかりと聞き耳を立てる。

すると、


──── ニャー……



名前「……え、上?」



確かに鳴き声は随分と上から聞こえた。

不思議に思って上を見上げれば、木の枝に乗って必死にこちらに向かって鳴いている小さな猫がいた。

……もしかして、助けを求めてる?
子猫みたいだし、自分で降りられなくなっちゃったのかな。

その間にも、ニャーニャーと悲しそうな鳴き声を上げる子猫。
こんなの、放っておけるわけがない。


木登りとかした事ないし、八木さん家の木は意外と高いからちょっと怖いけど、あの猫ちゃんはもっと怖い思いをしているはずだ。

そうと決めれば早速私は羽織を脱いでたすき掛けをし、木に足をかける。

……おっ、意外と登れる……?
油断して落ちては元も子もないので、ゆっくり丁寧に登っていく。


そして、



名前「 ──── お待たせ!助けに来たよ!」

「ニャア〜」



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