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名前「ていうか、そこで寝たら背中痛くなるよ?入って入って」
布団も何も敷かずに横になる左之さんに、私はガバッと布団を捲る。
すると、左之さんが一瞬眉を顰めた。
原田「……お前な、意味わかってんのか?」
名前「え、何が?」
原田「……いや、何でもねえ。……んじゃ、入れてもらうぜ」
名前「どうぞどうぞ。さあその腹筋で私を温めて」
原田「いや無理だろ」
名前「( 'ω')ウイッス」
的確なツッコミをいただきました、ありがとうございます。
私、左之さんといるとボケが加速するな。
左之さんの大きな体が布団の中に入ってくる。
一応私も女なので、彼に背を向けた。
原田「お前、本当に俺の腹筋だの大胸筋だの好きだよな」
名前「左之さんの価値の3分の2は筋肉」
原田「いやほとんどじゃねえか」
名前「嘘だって!……新八っつぁんの場合は合ってるけど」
原田「ちげえねえ」
こんなくだらないことを言い合って、くすくすと笑い合う。
こんなに幸せでいいんでしょうか……(震)
……だが暫くすると、左之さんの逞しい腕が私に巻きついてきた。
おっと? これはもしや……?
原田「………なあ、名前………」
名前「はーい」
原田「………雰囲気の欠片もねえ返事だな」
名前「私に雰囲気を求めるのが間違ってるよ」
原田「それもそうだな」
名前「……いやせめて少しは否定してくれ」
左之さんの低い声で名前を呼ばれ、ドキリと跳ねた心臓。
こう見えても平静を装うのに必死なんです。
だってこの人の声で囁かれてみろって、耳が妊娠するって!!!!
くそこの18禁ボイスがあああああっ!!!!
しかし、左之さんの腕がグッと私の体を引き寄せる。
私の背中はピタリと左之さんにくっついた。
ひいいいいい妊娠する!!背中が妊娠するううう!!!!
名前「……さ、左之さんってさ!」
原田「……何だ?」
名前「声だけで女の人を妊娠させられるでしょ」
原田「何言ってんだよ、そんなわけねえだろ」
名前「いや声だけじゃないな。だって私、左之さんのこと見てるだけで妊娠しそうだもん」
原田「………今、人生で初めて言葉を失ってる」
名前「そんなに!?これ褒めてるんだよ!?」
原田「どこがだよ……」
名前「いやなんか、全体的に」
原田「あんまり褒められてる気がしねえな」
名前「『死体みたいな白い肌に腐りかけの海苔の佃煮みたいな髪』よりはマシな褒め方だと思う」
原田「何で知ってんだよそれ……」
某ドラマCDのアレですね。
いやー、あれは笑ったねマジで。
女の人を褒めるのは上手なのに、男の人を褒めるのは苦手なんだね。
思ってることが素直に口に出る人だからかな?
どちらにしても、左之さんは女の子を喜ばせる天才だと思う。
名前「……てかやばい、早く寝なきゃ明日死ぬ」
原田「……ん?明日何かあるのか?」
名前「朝イチで一君の稽古」
原田「……あー、それは今すぐ寝た方がいいな」
名前「寝ます!おやすみ左之さん」
原田「……ああ。おやすみ、名前」
……よ、よし。
何とかそういう雰囲気は回避出来たぞ!!
だ、だって無理だもん、まだ心の準備が出来てないんだもん!!
でも朝イチで一君の稽古が入っているのは本当なので、寝ます!
おやすみなさーい!!
──── 人形のことなど疾うに忘れ去って、私はあっという間に眠りの世界へ落ちていくのだった……。
(………Zzz…………Zzz………)
(………なんっつー生殺しだよ、こりゃ………)
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